私の好きな人。【完】

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朝、目覚めると隣に

土方さんは、いなかった。



髪を手ぐしでとかし部屋を出た。



「起きたのか?」



声が聞こえた方を見ると



「パン焼いたから食え。」



テーブルを見ると

珈琲とパンが並んでた。



「ありがとう。」



お礼を言い席につくと



「わりぃな。

オレ仕事行かなきゃなんねぇんだ。

タクシー代置いとくから、これで帰れ。」



そう言って諭吉さんを

あたしに差し出した。



「えっ、いいよ。

自分で出せるし。」



突き返したけど



「だから金は男が出すんだって。

あ、そうだ。

鍵かけて帰ってくれねぇか?」



「か…ぎ…?」



「あぁ。これやるから。」



そう言って、あたしにキーホルダーも

何も付いていない鍵を渡してくれた。



「う…うん。」



戸惑いながらも返事をすると



「返すのは、いつでもいいから。」



「…うん。」



「ずっと持っててもいいし、な。」



「えっ…。」



「来たかったら、いつでも来い。」



「……っ。」



「は?何で泣いてんだよ。」



「それ、他の人にも言ってるんでしょ…?」



だって昨日女の人の名前言ってたし。



「は?オレは、お前にしか…」



「もういいっ。

聞きたくないっ、帰る。」



あたしは、すぐに着替え、せっかく

用意してくれた朝食に手を付けず

家を飛び出した。



「七瀬っ!」



土方さんの呼ぶ声が

聞こえたけど振り返ることはなかった。
 

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