Five Key

□Epi.5
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―――A.


あの日、僕らが
盗賊団を潰したおかげで
そこの街の人は
救われたって喜んでた

不当な巻き上げとかで
みんな苦しんでたんだって

お礼にって
たくさん財宝とか貰っちゃって


あの街は生まれ変わる


で、帰ってきて
とりあえずは
陽ちゃんの療養ってことで
イチが付きっきりで看病してて

その陽ちゃんは
全然普通に動き回ってるけど
蒼ちゃんに刻まれた"封印術"が
馴染むまでは絶対安静、なんだって

そんなにすごい力なのかな


で、蓮は僕と買い物
僕は荷物持ちなんだけど


「蓮ってさ、
 陽ちゃんのことどう思う?」
「…は?」

「僕は正直まだ信じれないんだよね
 だって僕の故郷も何もかも
 奪った犯人なんだもん」
「…そうかもしんねぇけど
 そうじゃねぇかもしんねぇだろ?」


蓮は出さないけど
本当は誰よりも
深い傷を心に負ってる気がする
…全く想像はできないけど


「信じてやれよ」


こうして不意に
寂しそうに笑う
彼の背中には
何が乗っかってるんだろう


「ね、蓮…」


僕が肩に手を置こうとした瞬間
蓮の手から荷物が落ちて


「…ッ」
「蓮!?」


そのままふらっと
地面に倒れたのを
慌てて抱き起こして
何度も名前を呼ぶ

ザワザワと野次馬が集まる


「酷い熱…ッ
 どいてっ、邪魔ッ!!!」


蓮を背負って
"風"の力で街中を駆け抜けていく


「なんで言わないのッ…」


なんで気付けなかった…?
人の息遣いや体温、
そういうものに敏感な僕が…


「蒼ちゃんっ」


ドタバタと家の中を走り回る
あ、蓮を寝かせなきゃっ


「ちょっとごめんね…」


息がしやすいようにと
蓮のシャツのボタンをさらに開ける

ちらっと見えた何かが
気になって開け進める


「…わ…」


蓮の胸に
大きく刻まれた傷痕
かなり深い…

よく見ると首筋にも
切り傷か何かの痕がある

…でもこんな怪我は
たぶん普通の人間なら死んじゃう
二ヶ所とも、急所だし


「みやちゃん、どったの
 レンおそうの?」
「わっ、いつから居たのっ?」

「シャツのボタンあけたあたり」
「居るなら居るって言ってよっ
 ってか蓮酷い熱で…」

「じゃひやさないと」


蒼ちゃんは部屋を出ていく

僕は蓮の傷痕が見えない位置まで
シャツのボタンを閉めて
ベッドの横に腰掛けて
蒼ちゃんが戻るのを待つことにした




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