Five Key

□Epi.6
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――M.


空から帰って
ようやく一段落着いて


「で、"蒼白"が全く解らないんだよ」


陽翔が最後の"鍵玉"の在処を
調べてはいるが
一向に手掛かりはなく
最早お手上げ状態


「なんかおてがみ」


領が釣りか何かから帰ってきて
みんながいるリビングに来て
食卓の上に封筒を一枚置いた

真っ黒い封筒には
宛名も差出人も書いていない


「開けていい?」


雅が封筒を開けて
中身を机の上に広げる
コイツには警戒心というものがないのか?


「便箋一枚か…」
「何て書いてあんの?」


白い便箋が一枚
しかも何語か解らない文章が
一文、書かれているだけ


「こういうのはハル」
「どれ…」


陽翔が便箋の文章を眺める


「…強力な"術"が
 掛けられているのはわかる
 でも俺には解けない」
「そんな変な"術"なの?」

「じゃイチにたのも」


そういえば
さっきからイチは
一言も声を発していない


「イチ?」


まるで魂でも
抜かれたかのように虚ろな眼


「イチ、どったの?」
「カズ?」


皆がイチの異変に気付いて
それぞれが声を掛ける


―――バチッ…―

『――!?』


静電気のような音
それは便箋からで


「コンニチワ」


イチとは違う声
それに振り返った時には遅く

黒い長髪で黒いマントか
何かで身を包んだ野郎が立っていて
顔には不気味な刺青がある


「コウミヤ カズ ハ ダレデスカ?」


本能が逃げろと警告する
それなのに足は動かなくて


「アナタデスカ?」
「…ぁ…」


怯えきった雅の目の前に立ち
つぅと首筋を撫でる
まるで…まるで吸血鬼が
血をすする前のような仕草…


「アナタデスカ?」
「…っ!?」


一瞬で陽翔の目の前に
移動したそいつは


「オイシソウ」
「離れ、ッろ!!」


回し蹴りも空を切って


「ッ…」
「イタダキマス」

「ぁ…、は……」
「ハル!!!」


領が刀で斬りかかって
でもそれも空を斬るだけで


「…ッ、何なんだよお前…」
「ミツケタ」


不気味に笑ったそいつは
跡形もなく、消えた


イチの姿も
いつの間にか消えていた



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