Five Key

□Epi.6-2
1ページ/15ページ



――S.


「―――!?」
「陽ちゃん?」

「…今声が聞こえた…」
「…声?」


頭の中に直接響くような
小さくか細い声
でも確かに俺の名前を呼んだそれ


「…ふむ、」


今さっき
目の前にいた朔が
何故か尻尾が二股の黒猫の姿に
化けたわけだが…

その姿でも
眼鏡を掛けてるって
どういう仕組みだ?


「おそらく、カズ様の声では?」
「…カズの?
 っていうかお前の正体は
 "そういうこと"でいいんだな?」

「はい
 私はカズ様の"遣い魔"でございます
 カズ様の望む姿にて
 お仕えしていたまでですが…」
「…サクちゃん?どしたの?」


雅の腕の中で考え込む朔
とはいえ猫の表情なんて
俺には理解できないが


「弟君の"魂"の残骸であることは
 間違いありませんので
 形としてはヨウの実弟でございます」


…ややこしい


「それと、
 "契約"が無理矢理
 断ち切られたようです」
「それってどゆこと?」

「…カズに何かあったんだ」


確かカズの右目は
悪魔のような朱い瞳だった

それに何か魔方陣のような
細かい模様が
刻まれていたのを覚えている

それが"契約"の証だったら?


「……」


無意識に左鎖骨を触る


「"契約"を無理矢理断ち切れる者など
 ごくごくわずかでしょうから」
「敵は特定出来るのか?」


生憎、そういう知識はない


「私の記憶では
 悪魔を切れるのは吸血鬼
 吸血鬼を切れるのは悪魔と」
「…吸血鬼と悪魔って違うの?」

「"元"が死者か、否か、です」
「じゃそれって
 吸血鬼の蓮は…」

「……」
「嘘でしょ…」


蓮はもう"この世には"居ない、
ということになってしまう


「だって触れるじゃんかッ
 蓮が死んでるなんて嘘だっ」
「蓮は俺の血を吸った
 俺と"契約"を交わした、」


それが何よりの証


「嘘だッ…」


雅は黒猫の朔を抱えて
ぎゅぅと縮こまってしまった





.

次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ