Divine Wind


□Prologue
2ページ/3ページ




"Nalm"の城がある場所から
さほど遠くない位置にある
"Tran(トラン)"地方。


カランコロンと
下駄を鳴らし歩く
蒼い和服姿の若者が一人。

その腰には
相棒である日本刀が一本。
柄は藍色の布が巻かれており
鍔は十文字のような形で色は銀。


「ふい、ちょときゅーけ」


若者は舗装された道の脇の
小高い丘の上で
"よっこらせ"と腰を下ろす。

日本刀は腰から外し
自分が抱えるように持つ。


「いぃてんき」


ふにゃりと空を仰ぎ
流れる雲をぼんやりと
眺めているようで。

魚が死んだような眼は
次第にとろんとしていき
ついにはその目蓋を閉じてしまった。

辺りを吹き抜ける風に
若者の銀色の
ふわふわとした短い髪がなびく。


やがて若者を
照らしていた太陽は沈み
辺りは月明かりに照らされる。

それでも起きない若者。
いつしかしっかり寝転んでいる。


ふと、若者の背後で
茂みで何かが動く音がした。

そして茂みから
ひょこっと顔を覗かせたのは
可愛らしい黒猫一匹。

ただし大きさは
大型犬ほどあり、
額には長く鋭い角がある。

可愛らしい
つぶらな瞳をしているが
れっきとした"魔物"。
食するのは"肉"だ。


化け猫は
眠っている若者へ
ソロソロと近付き、
その前肢を振り落とす。


―バスッ…――





.

次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ