Divine Wind


□Episode.1
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翌朝、小鳥が囀(サエ)ずる窓辺から
射し込んでくる光に目を擦り
のっそりと起き上がるアオイ。

どうやらお目覚めのようだ。

銀色の短い髪は
あちらこちらへと
無造作に跳ねている。


「んんっ…」


両腕を上げググッと
背筋を伸ばした後
崩れた和服を整える。


「さて、と」


愛刀を腰帯に差し
部屋を後にし
鍵を受付に返して
外に出たアオイが向かう先は
2層構造の町並みの上層で。


「んー」


夜とは違い活気溢れる町並みを
下駄を鳴らして歩いて
何かを捜す彼は
あちらこちらから注目の的となる。

彼はふらふらと歩きながら
道行く人に質問を投げ掛ける。


「テイラーってひと、しらない?
 このまちにいるって
 きーたんだけど」


その質問に町人の表情は
わかりやすく曇っていく。


「テイラーさんは…」


町人が指差したのは
宿屋の隣にあった焼け跡。


「…殺されたよ」


震えた声で紡がれた言葉に
アオイの瞳は揺れ動いた。


「だれに、とかわかる?」


アオイの質問に
町人は首を横に振る。


「そっか…」
「アンタ、テイラーさんの知り合いか?」

「んや、うらなってもらおうと
 おもってたんだけど
 …いないなら しかたないか」


焼け跡を見つめる瞳は
どこか悲し気で。


「占い…
 確かにテイラーさんの占いは
 凄かったからね…」
「このまちに うらないしは
 ほかにいる?」

「あぁ…居ることには居るが
 毎日昼間から呑んだ暮れているから
 あまりお薦めはしないな」
「なまえは?」

「確か、ネロ…だったかな」



溜め息混じりに
話す町人は今度は
酒場の看板を指差す。

アオイはふにゃりと微笑み
"いってみる"と町人に礼を告げ
酒場の扉を開けて中に入る。






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