□白いカーテン
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ゆっくりと声のする方を振り向くと、そこにはひとりの男子。
「なんかよくわかんねーけど…、泣き止め、な?」

少しかがんで、目線を合わせて話してくれる。かがんだときに前髪が流れて顔があまり見えない。それでも、遠くまで優しく広がるようなその声とその物言いは、うちをとても安心させてくれた。

「…グスッ…ごめんね、ありがとう…うち、嬉しくって…!」

精一杯の心からの笑顔で応える。

「嬉し泣きか、良かったー」
「俺らなんかしたかと思ったわ!」
「違う違う!ごめんねー、ありがとう、本当に嬉しいよっ」

うちの笑顔を見て、クラスメートたちもほっとした表情を浮かべていた。

なんていいクラスだろう…。

「はーい、君たち、歓迎会は済んだみたいだね?席についてー!」

担任の春宮先生だろう。
聞いていたよりずっと若い、女の先生が入ってきた。

「朝霧、ここでは、好きにしなね。だれもあんたを縛ったりしないんだから。楽しくやろうなっ」
「っ!!はいっ!!」

先生も、うちの目をしっかり見て話す。

「んじゃあ、朝霧の席はーっと…、あ、神谷の隣空いてるな、あそこ座りな」

先生は指差しで指定している。
そちらに目を向けると、男の子と目があった。

さっきの人だ…。

さっき、泣きじゃくる私に声をかけてきた…。
うちがはっとした顔で見ていると、

「朝霧さーん、隣だってさ、よろしくー」

その男の子が手を振ってきた。

え…?
君が

「神谷くん?」

「そっそー♪」
「えー、よろしくー!」
「えーって…地味に傷つくなー、まあいいや、おいでー」

えーって、嫌な意味じゃないんだけど…
ってかむしろ嬉しいんだけど…。

神谷くんは、隣のこれからうちの場所になる机をペチペチ叩きながらおいでおいでしている。

可愛い、笑顔…。

うちは、気付いていた。
不純な動機だとわかっているし、こんなんじゃ、ほんとの恋なんて呼べないと理解していた。
それでも、私には時間がない。だから…

神谷くん、

君を好きになっていいですか?



声をかけてくれて嬉しかった。もちろん、他のみんなからかけてくれた言葉だって嬉しかったけど、ただ、なんとなくの直感で神谷くんだけ特別だった。

何て言うか、表現できない感覚みたいなものがそこにはあって。

一目惚れ、それが一番しっくりくる。
でも、惚れたのは外見とかじゃなく、



だった。
そこだけは、自分でも理解できない領域だった。
いつまでも聞いていたいというか…。
言うならばお母さんの声のような。

「朝霧ー?早く来いよー」

神谷くんが急かしてくる。

「行きますっ」

うちは、神谷くんの隣に座る。
座ってみてから気づいたのだが、めちゃくちゃ近い…!

「恥ずかしいね!」

うちは神谷くんのほうを思いっきり見ていった。
神谷くんはキョトンとした顔で一度止まると、口をパカッとあけて思いっきり笑いだした。

「あはははははっ!!」
「えぇっ!?」
「あははははは!!」
「何で笑うのー!」
「だって、あははっ、朝霧正直すぎ…!」
「えぇっ!?そう!?」
「そうだよ!!てか…」

「かーみーやーくーん?」

気づけば横に、笑顔で今にも拳を降り下ろしそうになっている春宮先生が…。

「あ゛…」

神谷くんが、やっちまった…な、顔をしている。

表情がコロコロ変わるなー
見ていて飽きない。

ずっと眺めてたいかも?

神谷くんは、先生のお説教をくらっても気にしてる風なく、先生が教卓に戻ると、こちらを振り返ってニッと笑った。
そして、

「手貸して」
「いいけど、何で?」
「いいから、いいからー」

うちは手を差し出す。
そこに、神谷くんがなにやら文字をかいている。

「なぁに?」
「ベタだけど、メアドな!手にかくのが、青春っぽいだろ?」
え…
素でそうゆうことできちゃうんだなー…かっこいいな…

「ええっありがとう!メールする!」
「おう、待ってるー」

うちは、なんとさっそく神谷くんのメアドをゲットし、メールする約束までしてしまった。

あ゛ーっ顔がにやけるー!

この席で、このクラスで、この学校で、生きられることが嬉しくてたまらない。


あー死にたくないなぁ!!


そう思った。
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