□白いカーテン
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幸せな日々は、
続いてくれていた。

驚くほどに。

人間は、幸せになりたいと願って生きている。けれど、いざ、自分が幸せになりすぎると、どうしようもなく不安になる。
そういうものだと言ってしまえばそれまでだけど…。


2週間。

今日で通い始めて2週間がたった。
隣の席の神谷、神谷は、呼び捨てで呼び合う程度には仲良くなれた。
うちの気持ちも、決まりつつあった。

神谷が好きだ。

神谷は、頭がよかった。そのため、何度もうちのために勉強会を開いてくれた。
そのおかげで友達もできた。
ここが、うちの居場所だと認めてくれたみたいで、嬉しかった。

どんな未来か、決まっているうちだけど、神谷と、みんなと話していると、

来るはずのない未来を、明るい気持ちで夢見ることができた。

品定めみたいに、神谷を選んでしまったけど。

時間がないって焦って探した人だったけど。


うちは、間違ってなかった。


始めて聞いた声。温かく、よく通る。
君の名前。
笑顔。笑い声。
たまに見せる、儚げな眼差し。

心ここに有らずな、会話。

気づいてたよ、君が他の誰かを思ってること。

ときどき、窓の外を暗い目で見つめている。
横顔。


それすべてが

大好きだった。


時間がない、
そんなの言い訳にしかならない。恋はいつだって正面から!!

うちには、どれだけ病院に閉じ込められていても変わらない意思がある。

お母さんからもらった、
大切なうちの意思。

「いつだって真っ直ぐに生きなさい。」

お母さんの口癖。
そうやって今回の学校通いも許してくれた。




うちは、告白するよ。

今、好きだと思う。
伝えたいと思う。

後悔は、ぜったいにしたくないんだ。


最近は、分かる。
体が悲鳴をあげている。
軋む音が響いてくる。

だから今、
伝えなきゃ。



ピッピッピッ…プーッ
プルルルルル、プルルルルル…


『はいー、朝霧どったのー?』

聞きたかった声が流れる。
それだけで心臓が暴れだす。

「ん、ごめんねー!今さ、大丈夫?」
『おう、暇っ!!』
「それじゃさ、

川谷病院の前とか、来れるかな…?」

『………』

返事がない。
それなら、電話でもいいか…。

「ごめん!やっぱり電話で…」

『いや、いいよ、ごめん。行く行くー!』

……

「…うん、お願い」
『おう、待ってろ。』



なんだろう、違和感。
様子がおかしかった。

まだ夕方だし、お化けとかはまだでないし…。

気のせいかな。



―――うちは、病院内で待った。
学校以外は、入院生活。そこだけはどうしようもなかった。

大量の薬。

病室は一階で、景色は狭く重たい。

それでも、大丈夫。
神谷に会えると思えば、ここ一週間は明るくできた。

きっと、これからも。




そろそろ、来てくれるかな、


外に出よう。
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