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□雨上がりにもう一度キスをして
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「はぁ…止みそうにないですね…」


「あぁ、そうだなぁ」


どしゃ降りの雨の中、大きな木の下でななこは大きなため息をついた


普段はドイツと日本との遠距離恋愛の2人。やっとブロッケンの仕事が落ちつき久しぶりの休日。せっかくの休みなので忙しい日常を忘れのんびりと自然のあるところで過ごそうかと季節ごとに咲く色とりどりの花畑が有名な丘にななこお手製のお弁当を持ってピクニックに来たのまではよかったのだが…


着いたとたん、降りだした突然の雨。2人は逃げるように丘の上の大きな木の下で雨宿りすることとなってしまった


「すごい雨…」


「あぁ、雷は鳴ってないようだからここで雨宿りすりゃあいいさ」


幸い雨宿りした木は大きく濡れる心配はなさそうである。しかしななこは恨めしそうに空を見上げ深いため息をついた


(せっかく久々のデートだったのに…)


ずっと前から楽しみにしてて、朝早く起きて一生懸命お弁当も作ってきたのに…なのにどうして雨なの?


ななこはやるせない思いで少し濡れた髪をハンカチで拭いた。ブロッケンはそんな様子のななこに気付き優しく微笑むとハンカチを取り髪を拭いてやる


「んな顔すんなよ。眉間にシワよってるぜ」


「……はい」


ハンカチをななこに返すとブロッケンはそのままななこの手に指を絡めた


「目、閉じてみ?たまにはゆっくり雨の音を聞くのもいいんじゃないか?」


諭すようにそう言われななこはそっと瞼を閉じる


視界を塞ぐと他の感覚が研ぎ澄まされる。濡れた土と風の匂い。シトシトと刻む雨の音


先ほどまで不快だった雨の音は繋いだ手の温かさとリンクして心落ち着かせてくれる音へと変わってくる


慌ただしく時間に追われ忙しく過ぎ去ってしまう毎日。こんな風にゆっくりと雨の音を聞いたのは久しぶりかもしれない


そう思って聞くと雨の音も悪くはない。時間さえいつもよりゆったりと感じるから不思議である


ななこはそのまま目を瞑り黙って雨音をじっと楽しむ


しかし


ふいにふわりと唇に触れた温かい感触


ななこはそれがブロッケンの唇だと瞼を開き初めて気付いた


「無防備すぎ」


「えっ」


頬を赤く染めるななこに照れくさそうに口角をあげるブロッケンの頬もやはり赤くて


「まぁこれも雨のおかげだけどな」


と、いたずらっ子のように笑った。気付けばいつの間にか雲の隙間から太陽の日差しが見えてきた。もうすぐ雨はやみそうだ


「雨、やみそうだな」


赤い頬を悟られぬよう照れ隠しに軍帽のツバを下げるブロッケン。ななこはそんなブロッケンが愛しくて


「じゃあ、雨上がりにもう一度キスして下さい」


恥ずかしそうにそう言うとブロッケンの顔はますます赤くなり…


水溜まりに虹の橋が映る雨上がり。2人はもう一度唇を重ねた


end

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