満月の夜。
□4夜。
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病院に着いて、治療室に入っていったゆうを、すぐ傍の長椅子に座って待つ。
ゆうの身になにが起こったのかは、俺はまだ知らない。
見当もつかない。
ただ、ひたすらに目の前のこの部屋から出てくるのを待つだけ。
今が何時か、とか
学校には…、とか
そんなことを考えられる自分が信じられない。
なんで、こんなに冷静なんだ?
もう、自分が嫌になる。
こんなときにこそ、わからず屋な俺の思考力がほしいのに。
冷静さがあるからか、いつもより冴えてる自分がいる。
憎い、な。
なんてムカつく頭なんだ。
あぁ、自分の思うように扱えないのは、俺だからか。
コントロールできないのが、俺なのか。
そんな飾りみたいな使えないものは、いらないのに…。
あ…。あいつ、俺のことわかるかな?
あんなに酷い傷なら、わからなくても無理はないよな。
小説とか漫画だったら、そんな記憶の壁なんて、簡単に乗り越えられるんだろうな。
けど、現実が甘くないことくらい、俺でも知ってる。
俺がヒーローなら良かったのに。
そしたら……
いや、そんなこと考えるのは、ゆうに会ってからにしよう。
普通に、元気で出てくるかもしれないし。
そんな期待が、淡く弾けて消えることが怖かった。
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