†ヴァンパイア騎士†

□第一夜
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「魅姫、ちょっといいかな?」

「はい」

「みんなは引き続き授業を受けていてくれるかな?」

「はい、枢様」

授業中にわざわざ教室から魅姫を連れ出す枢の行動に夜間部の生徒は一斉に
枢の方を見るが、枢の一言で今までどおり授業に向き合う。

それを確認すると枢は魅姫と廊下に出た。

「枢様、お話というのは?」

「2人きりのときは様付けなくていいよ。 それに、君にしか聞けないことだしね」

枢の一言で今まで物静かそうにしていた魅姫の表情は一転し
先ほど優姫と話していたようなやわらかい表情に変わった。

「それじゃあ改めて聞くね、話って言うのは優姫のことでいいの?」

「そうだよ。 何か変わったことはあったかい?」

「優姫に関してはこれといってないかな。でも、零は時期に……」

「さすがだね、錐生くんの異変にも気づいてたなんて」

「それはそうよ、あの2人は覚えてないかもしれないけどそれなりに仲良かったんだから」

どこか懐かしそうに、でも寂しそうにつぶやく 魅姫
なぜそんな表情をするのか枢以外にはわからない。
魅姫がこんな表情をするて知っているのは枢と黒主理事長の2人だけ。

「それじゃあ、引き続き優姫のこと頼んだよ。僕は教室に戻らないとだから」

「任せて、優姫のことはあたしが守る」

「君がいてくれて頼もしいよ」

そう言って教室に戻っていく枢。
教室に入ったのを確認してから魅姫は校舎の外に出る。
この、たった数分の間に夜間部の生徒2名が校舎の外に出た。
おそらく枢も気づいている。でも、校舎の外に出ないのは、魅姫が必ず阻止すると信じているから。
魅姫と枢、2人には他の生徒には言えないような深い絆がある。
それは強いように見えてとても切ない絆。

(まったく、英ったらどこに行ったの?)

そう、抜け出したのは夜間部の生徒
藍堂英と従兄弟の架院暁。
それにしても、英が授業を抜け出すなんて珍しい。
英は枢に忠誠を誓っている上に、枢のことが大好きだから唯一一緒の空間にいることができる授業を
こっそりと抜け出すなんてありえない。
よっぽどのことがない限り……。

しばらく歩くと、女子生徒の悲鳴が聞こえた。
悲鳴が聞こえたほうへ向かうとそこには優姫の手を持ち牙を出している英の姿と
それを後ろで見ている暁の姿があった。

「英何をやっているの?」

「魅姫! お前がなぜここに!」

「枢様からのご命令よ、2人が校舎の外に出たから連れ戻してきてっていうね」

遠くで「やっぱりな」という表情をしている暁と、何がなんだかわかっていない優姫。
魅姫は英を優姫から離し、英が掴んでいた優姫の手を掴むと
自分の持っていたハンカチで優姫の手を塞ぐ。

「優姫、あまり無茶はしないでね」

「如月先輩?」

「人間の血はあたしたちにはご馳走。だから無茶をして無駄に血を流さないで。
理性をなくした吸血鬼を対処するのも少し難しくてね」

苦笑いで優姫に話しかける魅姫

「はい、気をつけます」

優姫の答えに満足そうな笑みをこぼし魅姫は英と暁を連れて校舎のほうへと消えていった。
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