Kmbk.

□着崩した制服
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別に、そんなにチャラチャラしてるわけでもないのに一緒にいるみんなより着崩している制服。着崩してる、というかなんというか。まず校内で、らくだ色のセーターを着ている生徒は誰ひとりいないだろう。そもそも、ブレザーを着ていない人はそんなにいない。ましてや、服装点検期間であろうと着てこない彼は何者だろうか。そんな疑問が服装点検を主に行う生活委員の私の心の中で芽生えた。

「あ、浅羽先輩!またブレザーを着ていないんですね!?今は服装点検期間なんですから、この期間くらい着てきてください!」
「んー、あかねちゃんー。おはよー。忘れてしまいました、てへぺろ。」
「もう、明日こそちゃんと着てきてくださいね?」

1人の生徒に、それも先輩にこんな執着してしまうのはおかしいと私も思う。それもこの疑問のせいだと全て思っていた。しかし、私は気づいたんだ。この疑問の本体はなにであるかを。そう、それは、『恋』、だった。
なんと、馬鹿馬鹿しい。その私の勝手な心情で1人の生徒に集中して注意をするだなんて。委員会の学年長として失格だ…。


 ― ――

「…っはぁ。」

カコン、と自販機から音がして、私は落ちてきた烏龍茶を拾い上げ、ひとつため息をはいた。
私がこの感情を恋だと知ってしまった時からずっと、頭の中がぐるぐるしている。
別にどうしよう、って訳じゃないのだけれど、なんていうか、わからない。自分でも。

「どーしたのあかねちゃん。」
「わっ、わぁぁぁぁっ!!浅羽先輩!?」
「そーです、浅羽先輩です。どうしたんですか?」
「い、いや別に…」

自販機の前でひとりモヤモヤしていたらいきなり後ろから声が聞こえた。何かと思い、振り返ってみると、やはりらくだ色セーターを着た浅羽先輩だった。しかし、今の私にはそこまで気が回らなくって。

「あれ、今日はブレザー着てくださいって言わないんだねぇ」
「えっ?い、いやっ、今言おうとしてたんです!」
「ふーん。なんか悩んでるように見えたから。」

モヤモヤしてるとこ、みられてたんだ…。いや、そうだよね。そうじゃなきゃ話しかけてこないし。ただ、そこまで人のことをみてて、なおかつ話しかける優しい浅羽先輩の行動に胸がきゅうとしめつけられた。

「ま、あんまり溜め込み過ぎないようにね。」

そう言ってそのらくだ色セーターで包まれたその手で私の頭をぽふぽふと叩き、じゃあ次移動教室だから、と行ってしまった。

今浅羽先輩に触られた部分が、熱をもつ。あつくなる。ついでに顔まであつくなる。さっきの冷えた烏龍茶で顔のほてりをさまし、自分のクラスに戻る。

「大好き、だなぁ…」

いつか浅羽先輩がブレザーを着てきたら、この想い、伝えますね。

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