短編
□腐男子≠ホモ
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前までネットでそのジャンルの小説を読むだけの日々を過ごしていたが、現在は身近に格好なネタ(ネタを使って妄想を繰り広げることはまだない)がある。
言わずもがな、カノとセトである。
ケータイをいじる振りをしながら、二人を窺う。カノがセトをリサーチしている。
「直球に弱いと思うっす」
「なるほどね〜。参考になったよ。ありがとセト」
「いえいえ」
……あれ、話終わりそう。
「……にしてもセト。君、どうしてそんなに情報持ってんの?」
「いつかカノが聞いてくると思って、前々から観察してたっす」
「……なるほど。その観察に助けられたから今回は何も言わないけど、もうやめろよ?」
「はいはい」
は? 観察? …セトの好みの話じゃなかったのか?
二人の会話は終わったらしい。カノは立ち上がり、ソファから離れ、――オレのところに来た。
「シンタロー君っ」
「なんだ……いてっ」
カプリと鼻に噛みつかれた。
思わず睨んだら、ヘラヘラ笑ってくる。
…五秒間、その笑みが消えた。
「好きだよシンタロー君。君が好んでるジャンルの意味で、ね」
「は……え、は?」
五秒間が終わる。五秒前までの笑みが戻った。
「つまりは恋愛感情さ。男同士での」
段々意味がわかってきた――顔に熱が集まる。
「オレにそっちの気はない!」
「あははっ。気がなくても、男同士を気持ち悪がらないなら、僕にチャンスは大有りさ」
適度に甘かったり辛かったりしょっぱかったりするものが好き。炭酸飲料が好きで、実は炭酸おしるこも好き。嫌いな味は――
ニヤニヤしながらつらつらあげてくる。リサーチしてたの、まさか、オレの事か? 服も、オレの服を選んでたのか?
「僕とセトの間にはなぁんにもないから、写真は消してね?」
ばれていたらしい。