短編
□Queen Of Kingdom
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……コイツはいつまで珍しい物を集めるんだろう。ふと気になって、訊いてみた。
するとヒビヤはうっすらと微笑んだ。だが雰囲気は今日一番の真面目さを醸し出している。
「僕は、好きな物をいっぱい集めた、僕だけの王国を作りたいんです。それが、僕の夢です」
「お前なら叶いそうで怖いな…。……好きな物全部集めたら、終わりか?」
「そうですね――ただ、一つだけ、難しいものがあるんですよね…一番欲しいものなんですが」
「? オレは何でも盗めるぞ、多分」
どうしてそこは言い切らないんですか――と言いたげに、エネがケータイのバイブを鳴らした。
ヒビヤは小さく首を横に振った。
「あなたにだけは、絶対盗めません」
「なんだそりゃ」
「…それに、それだけは、僕が自分で手に入れます」
意味が分からない。
分からなくても、王国を作るという夢は素直に応援したい。つたないながらアドバイスを贈る。
「綿密に計画を立てて、動く時はガンガン行っとけ」
「……分かりました」
ヒビヤがソファから腰をあげた。もう計画立てに行くのか…早いな。でもまあ、一番欲しいものらしいし、それなら納得だ。
オレが座るソファとヒビヤが座っていたソファの間には、横長のテーブルがある。ヒビヤは、そのテーブルを迂回してオレの前に立った。
「シンタローさん」
計画立てに行くんじゃないのか…?
黙っていると、子供特有の高い体温を持った手に頬を挟まれた。近付いてくるヒビヤ。
……チュウ。
軽いリップ音が鳴った。オレとヒビヤの唇から。
……あれ、オレ、キスされた…?
札束をオレの胸に押しつけて、ヒビヤが真正面から見つめてくる。その顔は少し赤い。オレが座っていて、コイツが立っているから、視線は床と水平に絡む。
「綿密に計画を立てて、動く時はガンガン行くんで、よろしくお願いします」
「え、ああ、……え…」
「舌入れられたくなかったら、今日はもう帰ってください」
最近の小学生、ませてるな――帰ろうか迷ったオレって…。
――結局その日、オレはすぐに屋敷を出た。帰り道、五秒に一回ペースで唇を触り、エネにこれでもかってくらいからかわれた――自分でも、どこの恋する乙女だ、と思う。
ヒビヤの夢は叶う。それが分かったのもあって、その日一日、オレの頬は弛んでいた。
END.
* * *
10000hit企画。初・ヒビシン。
ヒビヤのシンタローへの態度が、参考資料がないので分からない…。ヒビヤ君が若干マセガキ。
萌える展開を書きたいものです。