短編
□腐男子≠ホモ
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外と中の温度差により、窓一面には結露。結露と窓の向こうは雪。
……外のことは別にどうでもいい。
オレにとって大切なのは、今現在この瞬間、目の前で広がっている現実である。
「あ、これなんかどうっす?」
「いいね。イケイケすぎてないし。意外と足長いから似合いそうだ」
「食べ物は…ちょっと甘いものとか、ちょっと辛いものとかっすね。甘党や辛党まではいかないっす」
「なるほどなるほど」
リビングに繋がるドアを開けたら、一つのソファに座って、一冊の雑誌を二人で読んでいるカノとセトがいた。
オレは黙ってケータイにイヤホンを繋ぐ。耳に突っこんで、二人がいるソファから少し離れた椅子に座る。
「身近なところにネタ発見だな…」
「ご主人、カメラ向けてください。撮りますから!」
言われた通りにカメラをカノさん達に向ける。
画面が勝手にカメラモードに切り替わり、勝手に撮影される。無音で。エネにとって、シャッター音を消す事は造作でない。
「ピンぼけなし、バッチリです! 後で妹さんに見せましょう!!」
「ああ。……にしても結構たまったな――何枚あるんだこれ」
「十四枚ですね」
「結構たまったな……」
「ご主人はカノセトとセトカノ、どっちだと思います?」
「あー……どっちでもいいかな。リバで」
「私はカノセト派です!」
この話題中は、エネもオレをからかわない。
この話題――BL。
ニジオタコミュショーヒキニートがオレの代名詞。だけど実は、もう一つ足してもいい言葉がある。
腐男子。BLを好む男子。
初めはBLのことを「気持ち悪くはないけど珍しい」と思っていたが、エネとモモに毎日毎日BLの良さを語られ、今では「BL? いいよな、あれ」と思うようになっている。まだエネとモモ程はまってはいないけど。
オレ自身にはそっちの気はないけど。自分が対象になるのは考えられない。腐男子≠ホモ。