短編
□ロシアンルーレット
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アジトにオレとカノしかいないある日のことだった。
「シンタロー君、ゲームやらない?」
「いいけど…何やるんだ? PC? 3DS? PSP? Wii?」
「電子機器のゲームしすぎ…。そういうゲームじゃないよ」
カノはキッチンに消え、三分くらいしてから戻ってきた。手にお面くらいの大きさの深皿を持って。
テーブルに皿が置かれる。と同時にカノは椅子に座ってオレを手で招いた。オレは事情が読めなかったけど、カノの向かいに座った。
皿を覗く。袋に包まれた飴が数十個入っていた。
「この中に一個だけ、まっずい飴があるんだ。それを食べた方が負け。負けた方は勝った方の言うことを聞くってルール。お互い、目の力を使うのは無しね」
「…そんな危ないことできるか。アンタが勝ったら――なんて、考えるだけで恐ろしい」
「勝てばいいんだよ勝てば」
……。カノに勝ったら…。何を命令しよう。
…ベタベタするのを控えろ、だな。コイツのスキンシップは心臓に悪いんだ。
そう考えて、了承する。
じゃんけんで先攻後攻を決める。オレの勝ちで、オレの先攻。
飴の山に手を突っ込んで、適当に一袋摘まみ取る。ピンクの飴玉。美味しそうだ。
「…………ビミョーな味がするんだけど……『まっずい飴』なのか?」
「違うよ。『まっずい飴』はビミョーとかいう表現じゃ済まないまずさだから」
「……へえ……」
「ちなみにそれ、どんな味?」
「レバーみたいな味」
「じゃあそれレバー味の飴だ」
なんだレバー味って。
ゲームをさっさと進めるために飴を噛み砕く。レバー味が口の中に広がった。
カノがオレ以上に適当に飴を摘まむ。ブドウ色で美味しそう。見た目は。
「うえ……わさび味……からい」
カノが顔をしかめた。ガリッゴリッと飴が砕ける音。
ろくな味がない飴達だ。
次にオレが選んだ飴は、レモン色だけどアボカド味だった。誰か醤油くれ。アボカドには醤油だ! …もちろん即噛み砕いた。