短編

□どこの誰より
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「う、ゃ、ゃぁあっ、……ひゃぁんっ、や…っ」

「ねーえ、シンタロー君。まだ答えらんない?」

「はっ、ふぁっ、ひん、や、あっ…やらぁ…っ」

「へー、嫌なんだ。じゃ、続けよっか」

「ひぁあああっ!? あっ、や、らめっ…ぐりぐりやら…っ」


 オレの中を出入りする指、高まっていく熱。高まった熱は体内にとどまることを諦め、外に飛ぶ。


 ……どうして、こうなってるんだっけ。


 時間は一時間、遡る。



* * *



 アジトで、ソファに座ってテレビを観ていたときのことだった。

「うわああっ、どどどうしたんですかご主人!」

 ケータイに出現したエネが、出ていきなり大声をあげた。驚いて肩をびくつかせると、また「ご主人!」と呼ばれた。なんなんだ。

「どうしたんです、アニメ以外のテレビ……しかもバラエティーなんか見て!」

「別に普通だろ…」

「はあ!? 何言ってんですか!? 深夜アニメは全て録画し、画面のモザイクを取り除く作業に没頭するご主人が、二次元要素ゼロの三次元バラエティー観てるんですよ!? これのどこが普通ですか!!」

「モザイク取り除くとかしてねぇよ! お前の中でのオレってどうなってんだよ本当……っ」

 オレだって、バラエティーくらい観る。バラエティーだって面白い。
 肌がツルツルの女優とか、ツッコミに忙しい司会とか、その隣でニコニコしてるアナウンサーを眺める。
 いきなり、とある俳優のアップが映った。オレでも知ってるくらい有名な、二十くらいの男。笑顔が爽やか。

「……カッコいいな…」

 ちょっとした憧れ混じりに呟いた。イケメンさが羨ましい。


「…………そっかあー……ふーん……」


 妙に明るい声が頭の上から落ちてきた。喉を反らして見上げると、カノの逆さ顔が視界に映った。胡散臭いくらいの満面の笑みで。オレは何となく目が離せなかった。

「……何だよ、変な笑顔して」

 そのまま見つめ合って十数秒――さすがに恥ずかしくなってきて、頬が熱くなる前に顔をテレビに向け戻す。コマーシャルになっていた。
 ぼーっとコマーシャルを眺めていると、カノが、今度は正面に来た。

「何だよさっきから…。アンタもオレが深夜アニメ全部録画してたり、画面のモザイクを取り除いてたりする奴だと思ってんのか?」

「お仕置き」

 おかしい。カノがこんな質問に乗ってこないなんて。スルーするなんて。つうか「お仕置き」って、


「よっ、と」


 ……担がれた。何だ、これ。何で。どうして。
 意識が驚きから帰ってきて、体が抵抗を始めた頃には、カノの部屋に着いていた。気付いたらベットの上。気付いたら、シャツが胸の上まで捲られていた。

「な…んだよ! 離せ……っ」

「ダメに決まってるでしょ。お仕置きなんだし」

 猫目が三日月のように細まる。
 お仕置きされるようなことをした覚えはない。オレは首を傾げ、――その首に吸いつかれた。

 お仕置きの理由は、五分後に明かされた。



* * *



「答える気になったー?」

「…っやぁ…!」

「そんなに言いにくいってことは…あの俳優のが僕よりカッコいーんだね」

 ね、と言うと同時に、ナカに入った指が円を描く。掻き回され、しこりに指先が擦れ、体の芯がジン、と熱くなる。
 穴を広げるように指を広げられ、熱を引き出すように引っかかれる。

「ひぁっんんっ、あ、ぅあ…っ、や…ら、やだ…っああっ、か、のぉ…っ」

 イきたい。
 浅ましい願いはオレの腰をカノへ突き出させた。カノはさっきからいいところで動きを止めてオレをイかせてくれない。出したいのに出せなくて、おかしくなりそうだ。
 アナルに指の先が埋められ、腰が跳ねた。

「…シンタロー君。ここに、あの俳優のちんぽ入れてほしいの? ガツガツ突かれたいの? 抱き締めてもらいたいの?」

 カノに背を向けて、足の間にお尻を置いて座るオレには、カノの表情は見えない。その声には軽薄さがなかったが、理性の焼ききれたオレはそのことには気付かずに思ったままを言う。
 理性があったら到底言えないことを。

「ふっ、ぅ…やだ、カノのがいい…っ。カノのちんぽじゃないとやだ、っあ、ん……やだ…、だから、カノの、ちょうだ――ふああぁっ」

「――そっ、か。……うん、僕のがいいよね。……にしても可愛いこと言うよね、シンタロー君」

 一気に入ってきたカノのちんぽが勢いよく前立腺を抉る。オレはそれだけでイってしまった。
 おさまった熱は、動きを続けるカノによって、また高まっていく。

「あ、ひんっ、あっあっや、きもちい…っ、ひっ、あ、う、……んああっ、かの、」

「なあに?」

「すき…っ、ん、かの、いちばんすきっ――すき、だか、ら…ひゃあんっ」

「…っ、どうしたのさ、今日は。く、……デレ期?」

「ちが……」

「出すよ」

 否定する前に、熱いものをナカに注がれた。快感が限界を越え、オレも腰をピクピクさせながらイった。



* * *



「カノ……好き」

「……本当どうしたの、デレ期じゃないなら――明日を台風にしたいの? それとももっと襲われたいの?」

「……しね」

 カノが嫉妬するから、宥めるために言っただけなのに。ついでに普段言わない気持ちを言っただけなのに。
 イかせてもらえないのつらいし、だから言ってるだけで……言いたくて言ってるわけじゃない。


「僕もシンタロー君好きだよ。誰よりもね」


 そう頭を撫でられ、オレはまた「好き」の言葉をカノに伝えた。



END.



* * *
エロがエロくなくてすみません…。最後、甘いですかねもしかして。
リクしてくださった方のみお持ち帰りOKです。書き直し受け付けます。

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