短編

□合意の上での
1ページ/1ページ

「ただいまー、っす」

 秋の午後。
 任務から帰還した俺は、玄関に靴が少ないことに気付いた。皆は靴箱に靴をしまうタイプじゃないから、出かけたんだろう。あるのは一足だけ。
 その一足の靴を見て、俺の心は踊る。
 廊下をダッシュしてリビングに飛び込む。

「ただいまっす、シンタローさん!」

「セト。おかえり」

 テーブルに置いたPCをいじるシンタローさんが、俺を見て仄かに笑った。カノ達は出かけた、七時に帰ると言っていた、と教えてくれる。
 カノ達は七時まで帰ってこない。
 つまり、シンタローさんと二人きり。

 十代も半ばを過ぎた男子が恋人と二人きりになったら、することは一つ。
 背後からシンタローさんに覆い被さって、振り向いた唇にキスをする。シンタローさんは一瞬体を固くして驚いたけど、すぐ力を抜いて受け入れてくれた。

「ん……んぅ、」

「シンタローさん。…いいっすか?」

「…っ、だめ、だ」

 シャツの中の腹を撫でながら言うと、首を振りながら拒否された。俺は大人しく手を離してがっかりする。

 シンタローさんがキスより先を拒むのは、これが初めてではない。

 軽く十回以上、拒否された。
 抱かれることに不安があるらしい。そりゃあ、入れるには適さない箇所を使うし、何もかも初めてなんだし、不安がるのは仕方ない。だから俺も我慢している。シンタローさんに無理矢理なんてしたくないし。傷つけたくないし。
 けど、そろそろ限界。
 抑えていたものが爆発して、酷くしてしまいそうだ。

 限界、だけど、俺は無理矢理は嫌だ。「嫌よ嫌よも好きのうち」の拒否じゃなく、本気の拒否を無視するのは、絶対に嫌だ。
 でもヤりたい。
 悩む俺は一つ思いついた。

 無理矢理じゃなければいい。

 名案だった。今まで思いつかなかった自分を殴りたいくらいの名案だった。

「セト? どうした、ぼけっとして」

 長い沈黙をシンタローさんに不思議がられる。俺は、何でもない、と答えた。



* * *



 ある日。
 オレがアジトを訪ねると、そこにはセトしかいなかった。セトは明るい笑顔でオレを迎えた。リビングに通され、ソファとテーブルの間の床に座らされ、お茶とお菓子が用意される。アジトに行くといつもお菓子を振る舞ってもらえるので嬉しい――お菓子目当てで来てるわけではないけど。

「秋限定さつまいもポテ●チップス……」

「シンタローさん、限定もの結構好きでしょう?」

 頷く。だって限定ものは年中食べられるわけじゃないから。月見バ●ガーとかも好き。
 どんどん食べていいと言うので遠慮なくいただく。セトが隣でふ、と笑った。

「今日はみんないないのか?」

「マリーとキドはキサラギちゃんと買い物で、カノは任務っす」

「へえ……」

 誰もいないのか。お茶を飲みつつ、密かに体を固くする。前回二人きりになった時は、キスして、その先に行きかけたんだっけ…。
 おあずけは辛いだろうし、ヤらせてやりたいんだけど、まだ若干怖い。ネットで軽く調べたら、痛いらしいことを知ってしまったし。どうしたものか。

「……。……?」

 考えていると、体が熱くなってきた。気温が高いから、とかの熱じゃない。
 むず痒いような、……全身がイく一歩手前のような感じ。

「どうしました? シンタローさん。顔真っ赤っす」

「ん……セト…、…あつい」

「熱っすか?」

「ちがう……」

 セトがなんでか妖しげに笑っている、ように見える。
 ぴと、とセトの手がオレの額を覆う。

「ひぁっ」

 冷たい手に触れられただけなのに、体が跳ねた。なんでか気持ちいい。
 ここでオレは、どうすればこの熱が収まるかを本能的に理解した。
 緑のツナギを引っ張ってセトの顔を近づける。視界がかすんでセトの表情は見えない。
 半開きの唇に自分のそれを押しつける。

「ん…っ、は、ぅ、……んん……」

「…ん、シンタロ…さん、」

 するり、とジャージを脱がされた。頭の隅っこに残っていた恐怖に突き動かされて、ツナギを掴む力を強める。いつの間にやら背中に当てられていた手に抱きよせられた。

「はっ、ぅやあっ、触っちゃ、……んっ」

「シンタローさん、本気で嫌がってないっすよね」

「あっやっ、耳…っ」

 くちゅくちゅと耳を舌でなぶられる。
 セトにはオレが本気で嫌がっている時とそうでない時が分かるらしい。今まで手を出してこないでいてくれて、今出してきたのがいい証拠だ。
 シャツを捲られるだけで声が漏れる。

「シンタローさん、もう乳首尖ってる」

「言う、なっ、ああっや、やっ、舐めるな…っ」

 右の乳首はセトの口に収まっていた。舌でてっぺんをくすぐられて、軽く噛まれて。左は摘まれて転がされていた。

「あっ、ひゃあんっあっぁあっ、や、ら、…ふぁっ、ん、くるし……っせと、」

「イきそうっすか?」

「わ、かんな…っあ、ひああぁっ!」

 ズボンと下着の中に侵入した手。ぐ、と亀頭に爪をたてられた。途端にオレの体はびくびくして、ちんぽから白濁を放った。
 力が抜けてセトにもたれる。優しく腰を撫でられるが、それにも感じてしまう。
 なんでこんなに感じるんだろうと自分でも不思議に思ってしまう。

「あっあっ、やっ…ぁ、」

「もうイっちゃったんすね」

「ふ、ぁ、…やめっ、は……ん、ぁあっ、や、せと、やっあ」

「初めてなのに感度いいって……シンタローさん、淫乱なんすか?」

「ば、かっ、ちが、あっ、ふ、ちがう、に、ぁっ決まってるだろ…ひあっあんっ」

「でも、腰撫でてるだけなのにこんなっすよ?」

 指が一本、背筋を滑って上に行った。反対の手は下がり、指を蕾に当ててくる。思わず首をすくめると肩を甘噛みされた。そっちに気をとられていると、指がナカに入ってくる。

「ひ、やっ、ああんっあ! や、なんか、へんっ…」

「けっこう気持ち良さげにしてるっすよ?」

「あ、あ、あ、ん、っ、ふああぁあっ」

「イイトコ見っけ、っす」

 ひっかいたり擦ったり押したりと、しこりに愛撫が集中する。
 指の数は二本、三本と増えた。
 腰の奥が熱くてウズウズする。頭がじんわり痺れる。

「せ、と…っ、んっ、そこっ、そこ、やめっ」

「じゃ、指はやめるっす」

「あっ、ひああっ」

 勢いよく指が抜かれた。安心しつつ、名残惜しいと思ってもいる自分に自己嫌悪。
 さっきまで指が触れていた場所の入り口に、熱いものがあてがわれた。ひくりと、反射のように蕾がひくついた。

「挿れるっすよ」

「あ、待っ――ひっん、ああっ!」

「く、きつ……」

 軽く呻いたセトの口がオレの唇を塞ぐ。唇同士を触れさせることにも、オレの体は反応した。
 舌が口内を掻き回してくる。少し荒々しくて、息をしにくい。ちょっとだけ、腰の痛みが和らいだ気がした。

「ふっん、んん…ぁ、ぷはっ…」

「全部入ったっす」

「ん……っ」

「動くっすよ」

 それは確認というより宣言だった。
 セトはオレが頷く前に動き出した。今はもう、快感が痛みを上回っている。というより、痛みすら快感になっている気すらしていた。

「あっ、あんっやっあっあんっ、は、…ん、せと、も、イっちゃ……っ」

 パンパンパンッ――互いがぶつかる音が響いて、さっきも触られたしこりをグリグリされて、オレの限界は早くもやってきた。

「いいっすよ。……俺もそろそろ…」

「ぅ、んあっ、あ、ふあああっ」

 強い快感と、ナカに入ってくる熱いもの。唇に触れた温もり。

 それらを感じつつ、オレはあっけなく意識を手放した。



* * *



「無理させちゃったっすかねえ…」

 一応合意の上だったんすけど、と一人ごちてみる。
 くったり気絶してしまったシンタローさんの体を清めていると、頬が弛んだ。やっと念願が叶ったのだ。

 すみません、媚薬なんか盛って。

 名案を実行してお茶に媚薬をいれてみたけど、シンタローさんの乱れようはすごかった。もうちょっと抑えてするつもりだったのに、歯止めがほとんど効かなかった。
 とりあえず、シンタローさんが起きたらもう一つの期間限定お菓子をあげよう。それと、腰のマッサージをしよう。

 ……ああでも、マッサージでシンタローさんがあられもない声をあげたら、どうしよう?



END.



* * *
30000hit企画。
エロが比較的長いです。媚薬使ったのにそこまでエロくない気が…(・・;)
恋人と二人きり=セックスなセト←
リクくださった方のみお持ち帰りOKです! 書き直し受け付けます。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ