memo

 日常とか短編長編に使うかもしれなかったりする小ネタとか、色々語る部屋。
 
◆カノシン 

 扉を勢いよく開ける。ばんっ、という強い音を、頭の隅で聞いた。
 二人の顔がこちらを向く。泣き腫らしてやつれ顔のキサラギちゃんと、目に包帯を巻いたシンタロー君。
 キサラギちゃんが僕と入れ違うように病室を出た。二人きりにしてくれたことは言わずもがなだ。

 僕は無言でシンタロー君に歩みより、彼の頬を撫でた。シンタロー君は僕の手に重ねた自分の手を、腕へ、肩へ、首へ、頬へと辿らせる。そして笑った。

「……カノか」

「うん。そうだよ」

 輪郭をなぞらないと見えないんだ。きっと、包帯を外しても。

 キサラギちゃんから連絡を受けた。シンタロー君が己の目に衝撃を――強すぎる衝撃を与えた、と。病院に連れていったら、重度の、失明といえるレベルの白内障になると言われた、と。

「……白内障じゃ、暗いとほんの少し見えるけど…ま、上々だ…」

 シンタロー君は嬉しそうに包帯に指を滑らせた。僕の胸は、恐怖と怒りと悲哀と、絶望でいっぱいになる。

「……どうして、こんなこと」

「見たくないから。答を」

 返ってきた短い言葉は、予想通りのものだった。

「本当は抉ろうと思ったけど、そしたら見た目が変わって皆嫌がりそうだからな。白内障になるようにしといた」

 白内障でも嫌だよ。
 こんなことをしたシンタロー君を殴りたいと思うと同時に、シンタロー君が傷つくのを見たくないと思う。正反対の思いがぶつかって苦しい。

 一番苦しいのは、彼が、僕を見ることではなく、答を見ないことを選んだことだった。



* * *
鬱いというか病みというか、暗いシンタロー。小ねたにしては長くなった…。カノシンと言い張る。白内障、手術で治ったりしますが、シンタローは手術拒みます。周りは説得を頑張る。

2012/11/05(Mon) 19:31

by 嘉鈴
桜池様へ

 すみません、コメが書かれていたことに気づいていませんでした…m(__)m
 そうですね、私も皆がシンタローを説得するのを頑張るところを見たいです。ので、書けたら書きたいなー、と。書く時間を作らねば…。


[コメント編集]

by 桜池
この設定、凄くいいと思います! 時間が空いた時でいいので短編にして欲しいなぁ…なんて、出過ぎたことを言いました。すみません。これからも楽しみにしてます^^


[コメント編集]

[コメント書込]

[戻る]
[TOPへ]
[カスタマイズ]



©フォレストページ