説話1

□懊悩サンセット
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今日は晴れ。暑くて溶けそうなくらい夏の空気。それでも蝉があまり鳴いていないのは何故だろうか。去年は昼から急に降りだした雨に憂鬱で、私の心境を映しているように感じた。
あのことがあったから。あの日から、笑おうと決めたのに、頬を濡らす日も多々あった。それでも笑おうと努力した。心から笑えるように。
空を見上げる。雲一つない綺麗な橙色。
これは誰の心境?
「ねぇ」
私はちゃんと笑えていますか?
と、手の中の携帯が鳴る。ディスプレイには見慣れた名前。
『ばーか』
「………は?」
「あんたが思ってるほどヤワじゃねー」
携帯電話の向こう側の人が目の前にいた。通話中のまま、視線で会話する。
嗚呼、そうか。
この空は貴方の心。
私ではなくて、貴方の鏡。
これで、やっと………。

2011/07/15
 

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