未来への希望

□失ったもの
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彼女らが去った後、バーダックは何事もなく眠っていた。

このままいけばもうすぐ出られるという、その時―。

どこか遠くで泣き叫んでいるカカロットの声が聴こえたように、彼は眉を顰めた。

ガガッ

突然彼の脳波を表す波が大きく揺れた。


「お、意識が戻ったようだ・・・」

半分覚醒した頭で、ぼんやりと彼は夢のようなものを見た。いや、正確には映し出されたというべきだろうか。

突如爆発する星。
どこかに送り出されたポッド。

―ワシは今、お前に未来を予知できる幻の拳を放った―

その映像と同時に、あのカナッサ星人の言葉が再生される。

どこにあるかもわからない星の、自分とよく見た髪型の少年に棒を突き付けられた少女。

先程の少年と、もう一人小さな少年らしき人物を連れて歩く老人の姿。

不思議な黒い人物の前で座禅を組む少年。

サイヤ人のような服を着た人物と戦う少年。

そしてその少年が大きくなったであろう姿に、戦いを挑む他の星のものであろう人物。


そして、時折映し出される・・・傷ついた仲間の姿・・・。

記憶にもないことが一斉に映し出される。
それは誰だかわからない少年の、アルバムを見ているようだった。

自分とよく似た長い髪に、しっぽの生えた少年。

彼は、誰だ。
どこかでみたことあるような気がした。


彼が眠るマシーンの下にあるボタンを医者が押すと、まもなく彼の体を満たしていた液体は吸い込まれていく。
彼の胸下あたりまで液体がなくなったところで、彼はハッと目を覚ました。

「大丈夫か!バーダック」

その声で再びハッとしたように目を見開くと、呼吸器を外し短く答える。

「ああ、まだ頭がフラフラするけどな・・・」

頭を押さえながら、彼は言った。

その後元着ていた服を着用しながら、彼は先程のことを思い返していた。

「変な夢を見ちまったぜ・・・」

僅かに不機嫌そうに発したその呟きが聴こえた医者は繰り返した。

「夢?」

「ああ・・・」

なんだってんだ?ありゃあ・・・。

ぼんやりと覚えている先程の夢。
どこか、引っ掛かる。


「本当に大丈夫か」

「フン・・・てめぇらとは出来が違うんだよ、出来が」

皮肉まじりに返ってきた言葉を聞き、問いかけた医者は僅かにしわをよせた。

少しでも心配した自分が馬鹿だった。

「それより、トーマ達はどうした」

そんなことを知ってか知らずが、彼は今一番疑問に思っていることを聞いた。

「フリーザ様の命令で、惑星ミートに出かけて行った」

「何!?・・・ちくしょー、俺を仲間外れにしやがって!」

文句をいいつつも、どこか彼は楽しそうにスカウターを耳に装着する。

「惑星ミート、すぐ近くだな!よし!」

先程治ったばかりだというのに、彼はもう自分を置いて行った仲間たちの元へと向かって走り出した。

彼は根っからの戦闘好きだ。
そして、仲間と戦えることを楽しみにしていた。

「おい!バーダック!」

止める言葉も聞かず、彼はもう廊下の向こうへと姿を消していた。
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