読み物

□僕の…
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小さい頃の口癖。
「このビー玉だれの〜?」
「ぼくの〜。」
「この絵本だれの〜?」
「ぼくの〜。」

広い屋敷のあちらこちらにビー玉や絵本を置いたままにして、それを何時も片付けてくれるのは僕の側近の雪女だった。

「ちゃんとお片付けしないと大事な物もなくしちゃいますよ。」

そう言われて、片付けをするように気をつけていたのに、中学に上がった今でもたまにしちゃう時がある。


日曜日の昼下がり、お昼ご飯を食べ終わって縁側はぽかぽかお日様が差して気持ちいい。お茶を飲みながらのんびり日向ぼっこをしていたら屋敷の奥から声が聞こえた。

「これだれの〜?」

あぁ、僕はまた何かを置いたままにしていたらしい今度は何を片付け忘れだのだろうか。奥の部屋に立ち上がりながら口癖が口をつく。

「僕の〜。何を置いてたぁ?」

奥の涼しい部屋から聞こえた声に答えるべく足を向けると部屋を片付けようとしていた女妖怪が入口に立っていた。その横から奥を覗くと部屋の奥に白いモノがある。はて、僕は何をここに忘れていただろうか?部屋に足を踏み入れて白いモノを持ち上げようと手をかけた。

「リクオ様のでしたか?」
女妖怪が疑問符付きで聞いてきたが、それを見て僕は口癖とはいかに怖いものかを思い知った。

僕は白いモノを持ち上げてビシリと固まり、顔が真っ赤になるのがわかった。

「う、うん…僕の……。」
小さな声で呟き、僕は白いモノ。すよすよ眠るつららを抱えて急いで部屋を後にした。

『僕の…』であることには。間違いないよね!?
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