ユグドラ・ユニオン

□君がいるだけで
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「これ…なんだろう?」

草むらに映える紫色に、キリエは思わず近付いた。

「これ、花だ……。」

まるで畑のように広がる紫…ラベンダーの花は風に揺られ、優しい香りを出していた。


普段、空を飛び回っては世界を上から見ていたキリエにとって、それは初めて見る珍しい花だった。
それを一本取ってみると、目を細め穏やかに微笑んだ。




君がいるだけで


…………


「キリエ!おーい、キリエ!!」

「う…ん……。」

自分を呼ぶ声に、キリエはゴロンと寝返りをうつ。

「キリエ…起きろって。」

自分の肩に触れる手の温かさ。それを感じ、キリエはそぅっと目を開けた。
ぼんやりと視界に映るのは、幼馴染みの…

「ん…どしたの。ミラノ…?」

「んな呑気なこと言ってんなよ。」

ミラノは肩をおとし、溜め息をついた。
キリエが上半身をゆっくり起こし、座位になる。

「どうして、こんな場所で寝てたんだよ…。」

「ん…。この花の香りを嗅いだら、なんだか眠たくなっちゃって。」

「アルまで寝てるしな…。」

ミラノは呑気に寝息を起てるもう一人(?)の存在を見て苦笑した。

「安心できるからかもね。」

「…かもな。」


ミラノとキリエは互いを見て笑った。




君といる この時間が
君と笑う この瞬間が

一番…安心できるんだ。

そう、まるで…
この紫色の珍しい花…

…ラベンダーの花みたいに。


「さあ、そろそろ行こうぜ。あんまり時間食ってると怒られちまうしな。」

「うんっ!!」


何気なく差し伸べられたミラノの手に、キリエはそっと手を置いた。




END


…………………………

企画:世界樹に手を伸ばして
…に掲載させていただいた作品です。
参加させていただき、ありがとうございました。
本当にお疲れ様でした。

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