*お宝お年賀話の部屋*

□『宵待草』の空音様からのお年賀話
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ひそかに




遠くから聴こえる、重々しく鳴り響く鐘の音。
暇つぶしに数え、ゾロは時折星の瞬く空に向けて白い息を吐いていた。
予定を作った相手は来る気配も無ければ、携帯電話も静かなまま。
小さなコーヒーの缶はとうに飲み終わり、襲う眠気に勝とうと再び自販機に立つ。
照明の調子の悪いそこで勘を頼りに押したそれは甘いおしるこ。
ツイテねえ、と舌打ちしながらも捨てられずにちびりちびりと飲んでいく。
目の前を過ぎる人影はまばらに、けれどそこに目的の色はなく、甘い香りの混ざる白い息を昇らせた。
金色の星。黒い空。白い息。
連想させるそれらの色。
想う相手。今待つ人。
鐘の音は、終りに近付く。
日付も年も変わってしまった。
携帯電話を取り出して、一言文句を言おうと決めた時、控え目な電子音と振動。
画面に現れる名前は待ち人。

『今どこだ?』
「てめえの決めた場所に決まってんだろ」
『悪ィ。もう着く。今着く。すぐ行って暖めてやる』

走っているのか、ゼェハァと荒い息づかいをまじえた電話はすぐにきれた。
さっきまでの苛立ちも同時に消えた。
何分もの間を開けずに視界に入った金色は、見る間にはっきりと、そして見えなくなって。

「今年もよろしく」

身体を包む温もりと、唇に触れた冷たさに、一生な、と心の中で呟いて笑った。












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