*お宝お年賀話の部屋*

□杉崎楓様からのお年賀話
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運良く波も風も穏やかな場所で年越しを迎えられた、麦わら海賊団。


今年も、団自慢のコックが腕によりをかけて作った豪華なお正月料理が、机狭しと並べられている。


「うわぁ、キレーイ!」


1番最初に食堂に入ってきたナミが机の上を見回して目を輝かせると、続けて入ってきたルフィ・ウソップ・チョッパーが感嘆の声を上げ、また、その後ろに居たロビンも静かにニッコリと微笑んだ。


「いやぁ…ちょっとハリキリすぎちゃいました」


と照れ笑いを見せるサンジだが、皆の目線は既に机の上に釘付けだ。


「こんなたくさんの品数…相当時間かかったんじゃない?」

「まぁ…」


あえて言葉を濁らせるサンジに、ナミたちはそれ以上突っ込まなかった。


制作日数を聞いて驚いたり心配したりした所で、料理が好きで自分たちに自分の作った料理を食べさせるのが好きな彼にとっては何にもなりはしないのだから。


むしろそんな反応をしたら逆にサンジに失礼になるという事を、全員がちゃんとわかっていた。


「俺早く食いたい!!」

「そうね、冷めないうちにいただきましょうか…」


各々が席につこうとした時、いつものように手を顎に添えたポーズでロビンが口を開いた。


「…剣士さんが居ないわ」


そう呟いた途端、ナミがまた重い息を吐き出す。


「ぁんのバカ…またどっかで惰眠ぶっこいてるに違いないわ…」


呼んでくる!とドアに向かおうとしたナミを、さり気なくサンジが引き止めた。


「…サンジくん…?」

「俺が呼んできますから、ナミさんは座って待ってて下さい」

「……そうね、お願いするわ」


自分が認めた途端、いつものデレデレとした笑顔ではなくニッコリとした爽やかな笑顔を見せたサンジがドアからゆっくり外へ出ていくのを眺めながら、ナミはまた1つ溜め息を吐いた。


「ホント…アイツらは…」










冬にしては暖かい日差しが上から降り注ぎ、穏やかな風が髪を撫でる。


そんな天候に微笑みながら、サンジはゾロを見つけた。


「…やっぱりココだ…」


ゾロが居たのはナミのみかん畑で1番立派な木の下。


しっかりとした幹に支えられながら寝るのがとても心地良い、とゾロから聞いてからサンジはまずココから探すようになったが、その考えが外れた事は1回もない。


その太く逞しい幹に背中を預け、いつもよりも気持ち穏やかな表情でゾロは眠っているのだ。


そんなゾロにゆっくりと足音を立てないように近付き、目の前にしゃがみ込む。


人の気配に敏感な彼がこんなに近付いて気付かない訳はないのに、目は開かれない。


クス、と口元を緩めてゆっくりと唇を重ねてみると…目の代わりに口が開かれた。


「…イキナリそういう事すんなっつってんだろ」

「俺が来たのわかってたくせに起きないアンタが悪いんだよ」


サンジが言うと、翡翠の輝きを放つ瞳がゆっくりと開かれていく。


「ホラ、皆待ってるよ。正月ぐらいは一緒にいただきますってしなきゃ、」


促すように手を差し出してきたサンジに「わかってる、」と返したゾロは差し出された手を握ってゆっくり立ち上がり、2人は歩き出した。


「アンタの好きな黒豆とお煮しめ、たくさん作っといたからね」

「…出汁巻きは?」

「勿論あるよ。栗きんとんもカマボコも。お雑煮もアンタのだけちょっと濃いめにしてある」


濃い方が好きだもんね、と言ったサンジの手と微かに頷いたゾロの手は、離される事無く。


「悪ぃな…色々ワガママ言っちまって」

「いーえ〜、そういう意見も取り入れるべきだと思うし…何より、アンタのワガママなら、聞かない訳には行かないっしょ」


振り向きながらフッと微笑むサンジの肩口に、ゾロは頬を少し赤らめながら顔を埋める。





「………ありがと、」






滅多にない素直なゾロに、逆に真っ赤になってしまったサンジは食堂でナミに散々突っつかれたが、勿体無くてそんなゾロの事は言えなかったという。


いつもと変わってなさそうで、実は変わっているような…そんな、年明け。


まだ、新しい年は始まったばかりだ。








END

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