*お宝お年賀話の部屋*

□H.A様からのお年賀話
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「雑煮事件」



12月31日の夜、GM号のコック、サンジは必死にクルーのアンケートをとっていた。
翌日元旦に作るお雑煮についてのアンケートを。
そもそも雑煮というものは、地域やその家によってまったく違うものだ。
そしてサンジの故郷では新年に雑煮を食べる習慣すらない。
その為毎年自分の知っている作り方で提供してきたのだが、今回はみんなの家庭の味を再現するため一人一人に話を聞いて回っていた。
「おれはもちの中のあんこと汁が混ざるのが好きだー!」船長は蕎麦をすすりながらそう言う。
「うちのお雑煮は大根と白菜が入ってたわ、ベルメールさん毎年作ってくれたなあ。」
「え、うちのはもちの中何にも入ってないぞ、具はかまぼこのみだし。汁は合わせ味噌ベースかな。」
「おれが食べた事あるのは魚の白身と里芋の入ったのだ、汁の色は透明だった。ドクターが作ってくれたんだ。」
「私は、食べた事がないからコックさんにお任せするわ。」
みんなそれぞれの希望を口にする。サンジは最後の一人となった剣士のもとに向かった。
「ゾロ、お前は?」
「人参とゴボウと白菜が入ってた、もちの中は何にも入ってなかったな。汁は醤油ベースかな。」
「了解。むちゃくちゃうまいの作るから楽しみにしてろよ。」
「ああ、楽しみだ。」
ゾロには珍しく、万遍の笑みで返事をした。
彼のこんな笑顔を向けられたのは本当に久しぶりで、心臓が一気に跳ね上がったのが分かる。
どれだけ愛を語っても、必死になって抱いても、本当に自分が愛されているのか、いつも不安で一杯だ。
自分だけに向けられた最高の笑顔。いつもこの笑顔が見たくて、努力して、努力して、空回りしている。
年があけて、うまい雑煮を食わしたら、また俺だけに笑ってくれるかもしれないから頑張ろう。サンジはそう心に決めた。


そして翌日1月1日、元旦。
年越しで盛大に盛り上がったクルー達は全員遅い朝食の為にキッチンへと集まった。

「明けましておめでとー。」
「おめでとー、今年も宜しく。」
「おはよう、ナミさんロビンちゃん今年もきれいだー。」
騒がしいキッチンの中、コックは一人一人の為に作ったそれぞれの雑煮を注いだ。
「サンジ君凄い!これ本当にベルメールさんのお雑煮よっ!」
「サンジ、すげーうまいぞこれ!」
「サンジありがとう、本当においしいぞ!」
みんな口々にサンジを褒め称える。サンジは幸せな気分でそれを受け止めた。
しかし、そんな中ゾロの様子だけがおかしい。
「おうマリモ、味はどうだ?」
偉そうに、しかし内心ひやひやでサンジはゾロに聞いた。
「あ、ああ。まあ、うめえ。」
ゾロはぎこちなくそう答えた。
サンジのこめかみに青筋が入る。
「なあ、うまくねえならうまくねえってはっきり言えよ。」
「うめえって言ってんだろ?」
ゾロの眉間に皺がよる。
「明らかに昨日と反応違うじゃねえか、言いたい事あるならはっきり言え。」
「・・・別にねえよ、ご馳走様。」
サンジを避けるようにゾロは席をたった。

「新年早々最悪ね。今年はみんなの前でもゾロに優しくするんじゃなかったの?」
ナミの言葉が心に突き刺さる。
「ゾロの雑煮もうまいぞ〜、サンジ。」
ルフィの慰めもまったくきかないほどサンジは落ち込んだ。
最悪だ、新年早々あんな顔をさせてしまった。
昨日の夜はあんなに楽しそうだったのに。
雑煮食ってうまそうな顔見たくて、ほとんど寝ずに頑張ったのに。
きっともう一度頑張って作り直しても、あの笑顔は向けて貰えないだろう。
俺の言い方が、もう少し違ったら、他の奴らに向けられる笑顔だけでも見れたかも知れないのに。
「えっサンジ君?やだ、ごめん、嘘!?」
「うわっサンジ何泣いてんだ!?」
「おい、サンジ・・・。」
みんなの言葉もほとんど耳に入らず、一言「ごめん、寝る。」とつぶやき、サンジは男部屋へ戻っていった。







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