*お宝お年賀話の部屋*

□J様からのお年賀話
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『年賀状』




「おつかれさん。配達は終わったのか?」
「ああ、お前のとこで最後だ」

そう言い、配達用の黒い鞄の中から、輪ゴムでくくられた年賀状の束を取り出した。
サンジにその分厚い束を手渡しながら、

「お前ん所が一番多かったぞ。村中から来てるんじゃねえ」

と微笑んで、さっさと階段を上がって行く。

「本当だ、去年とは大違い…。」

昨年は、此処に店を開いたことを知らせていた昔馴染みの友人からの年賀状だけだった。
今年手渡された年賀状は、その何倍もの厚さになっている。


部屋に入ると、ゾロは既にソファの上でウトウトし始めていた。
昨日は一緒に年越し蕎麦を食べ、除夜の鐘を聞いてから、近くの神社に初詣に行った。
その上、年賀状を配るために朝が早かったから、寝不足なのだろう。
静かにソファの端に座り、受け取った束の輪ゴムを外すと、一枚一枚読んでいった。

「あぁ、ゆかちゃんから来てる。可愛い犬の絵だなぁ。…ゆうびんのおにいちゃんと仲良くね。ん、もちろんだよ。これは、ナミさん!今年もゾロを宜しく。…はは、まいったな。あ、この汚い字は!!やっぱり、ルフィだ。世界を見てまわるって言ってだけど、今何処に居るんだ?帰って来てんのか?あいつ」

次々と年賀状を読みながら、傍らで静かに眠る男に視線を向ける。
あの七夕以降、お客も増えた。
村に下りれば、声を掛けて来る人も居る。
この村に受け入れられたのだ。
此処に居場所が出来た。

「あんたのお陰だよ。」

そう優しく囁いて、可愛い郵便屋さんの頬に口付けた。







〈おまけ〉


サンジがまだ読んでいない年賀状の中に、字だけのシンプルな年賀状がある。
「明けまして、おめでとう御座います。此れからも、宜しくお願い致します。ロロノア・ゾロ」
「今年も」ではなく、「此れからも」と書かれていることに、受け取った人が気付くのか。
はたまた、書いた本 人も気付いているのか。
それは、まだ誰も知らない。








END
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