その他BOX

□ヘッドフォンアクター
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交差点は当然大渋滞なわけで
車やバイクが道路を塞いでいた
この場にもう
老若男女はまるで意味を
為していなかった
さまざまな人の怒鳴り声や赤ん坊の鳴き声でその場は埋っていた

それを気にもせずに
私は走り抜けた
途中で暴れだす人や泣き出す少女がいた
教会の前では泣きながら神父が祈りだしていた
それをも気にせずに走り抜ける

私が目指すのは
皆が行く道とはまったくの
逆方向である、あの丘の向こう

依然ヘッドフォンから声がして
「あと12分だよ」と告げた

このまま、地球が終わってしまうのなら・・・・・・
全て消え去ってしまうのなら
もう、それをとめる術なんて
存在しないでしょ?

全ての人々の泣き声のような
悲鳴合唱をずっと聞いて走ってきた
私は涙を流しながら走り抜けていた

疑いたいよ・・・・・・
止めたいよ・・・・・・
けど・・・・誰がどうやっても
この世界が滅んでしまうのなら
例え皆が、無理だと言っても
私は抗うよ・・・・・
抗うしかないでしょ?
だって・・・・この世界が
ここの人々が・・・・
大好きなんだから・・・

「駆け抜けろ、もう残り1分だ」
休憩なしでずっと走り続けて
息も上がりきっている私には
その声はもう届いていなかった

ただ、ただ
走り続けて目指していた
丘の向こうはすぐ目の前だった

息も絶え絶えたどり着いたのは
空をも覆い尽くすようなモノの前だった
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