水泳部のカナヅチくん!

□ 山から降りるカナヅチ!
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山梨町

人工100人足らずの小さな山奥の里

ここにある山梨中学は今、卒業式を終えた

しかし生徒は出て行くわけではなく、そのまま同じ敷地の山梨高校へと全員が進学する

たった一人を除いては



山梨中学 教室内では卒業式の後、卒業生達が話している

「なぁ〜、智也ぁ」

「何?」

智也と呼ばれた小柄でひ弱そうな少年は椅子に座りながら振り返る

「お前本当に他校に進学すんのかよ?」

「えぇ?あ、うん」

「何でだよ?お前だけだぞ、山梨高校いかないの」

そう そのまま進学しない生徒は智也のことだ

「何でって言われてもなぁ。わかんないかな?」

「わかるかよ。だってみんな一緒だし、その方が楽しいだろ」

この言葉を聞いた瞬間、智也の顔が曇った

まるで勉強しろとひつこく親から言われた子供の様に

(それだよ。この町の人達のそういうとこが僕には理解出来ない)

口に出そうになるのを飲み込んだ

そして頭とは違う言葉で返す

「なんか違う世界が見たくなったと言うか…」

「んだよそれ。まぁお前が選んだんだから俺にどうこう言う資格はないか」

呆れた様な顔をした後、そのクラスメイトは笑った

智也の見慣れた笑顔だ

「で、お前が行くのはどこ高だ?」

「青海高校だよ。別の県にある都市部の学校」

「へー、そりゃいいな!都市部に行ったらお前は垢抜けんのかな? 高校デビューってか?」

「あは、そうかもね」

「似合わねー!てか、想像つかねー!」

二人で大笑いする

智也は大人しくオシャレも興味がない素朴な少年だ

みんなが幼い頃から知ってる彼はそういう少年なのだ

それがいきなり洒落始めるとは考えずらいのだろう



こんな他愛ない会話をしつつ、智也だけ今でずっと同じだった学校の生徒たちに挨拶をしていった
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