main

□ひとり
1ページ/1ページ



「ふっ......っう......」
思い描くのは愛しいあの人。
「あっ......んぁっ!」
激しく両手を動かし、高ぶりを更に追いつめる。
とめどもなく溢れる先走り。
『長太郎』
よく通る、耳障りの良い声。
邪気のない、まっすぐな瞳。
俺の名前を呼ぶ、宍戸さんの姿を脳裏に浮かべる。
「ししど、さんっ......」
敏感な尿道口に軽く爪を立て、カリカリと刺激する。
気持ちいい......。
でも、どこかで虚しさも感じている。
この手で宍戸さんに触れたい。
そして俺にも触れてほしい。
欲望を握りしめ、最後の追い込みをかける。
「くぅっ!」
腰が跳ねる。
まぶたの裏で、あられもない姿をした宍戸さんが俺をさそう。
『きてぇ、ちょぉたろ......』
宍戸さん、ごめんさないっ。
真っ白な粘液が迸り、俺の掌を汚した。
「はぁ、はぁっ......」
荒い息づかいをゆっくりと整える。
汚れた掌をティッシュで拭う。
心地よい解放感と同時に沸き上がる罪悪感。
宍戸さん、ごめんさない。
いい後輩でいられなくてごめんさない。
でも、俺はこれからも宍戸さんを汚し続けてしまうだろう。
あんなに綺麗な人を。
気位が高く、潔いあの人を。


終わり

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ