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□鳳長太郎のライバル
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たまにオレのクラスに姿を見せる先輩。
テニス部の宍戸亮先輩。
彼がこのクラスに来るのは、彼のダブルスの相方で、オレのクラスメイトでもある鳳長太郎に会うためだ。
それでも、この人が姿を見せるとオレのテンションはめちゃくちゃ上がる。
「宍戸先輩」
「あ、高瀬。長太郎いるか?」
最近では、鳳よりも先に先輩を見つけてすぐに声をかける。
まぁ、すぐに鳳に見つかって、先輩を奪還されちゃうんだけど。
でも、名前と顔を覚えてもらえただけでも大進歩。
マンモス校故、学年が同じ奴でも、クラスがかぶらなきゃ顔も名前も分からないなんてざらだし。
宍戸先輩、あんま他人に興味なさそうだし。
「鳳なら、さっき音楽室に行きましたよ」
内心、この場に鳳がいないことをラッキーに思いながら先輩に教える。
ほんとは鳳の事なんて教えたくないけど。
宍戸先輩の前では優しくて気の利く後輩の顔をしている。
「そっか。じゃあ、また後で来るかな」
そう言ってさっさとオレの元からいなくなろうとする先輩。
オレは慌ててその腕を掴んだ。
「ちょっ、先輩もう帰っちゃうの?」
いきなり腕を掴まれた先輩は、びっくりしたようにオレの顔を見て、そして笑った。
「なんかおまえ、長太郎みてぇ」
その屈託ない笑顔に、柄にもなく見惚れてしまった。
「先輩...オレ」
「宍戸さんっ!」
オレの言葉を遮って、鳳が宍戸先輩に駆け寄る。
戻ってくるの早ぇえよ。
「も〜どうしてこんな所にいるんですか?俺、宍戸さんの教室に行くから待っててって言ったでしょ?」
どうやら鳳は、自分が不在にしている間に宍戸先輩がここに来ないよう、前もって言っておいたみたいだ。
抜け目ない奴。
そして、宍戸先輩の腕をオレからもぎ取るようにして引き離す。
「わりぃな、長太郎。すっかり忘れてた」
「ダメですよ。ちゃんと俺の言うこと覚えててくれなきゃ」
口調は柔らかいし、声のトーンが甘いから聞き流しそうになるけど、こいつの言ってることメチャクチャじゃね?
上下関係に厳しい体育系で、さすがにこれは通らないだろ。
宍戸先輩の鉄拳が下されればザマーミロだ。
オレは宍戸先輩に期待の眼差しを向けた。
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