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□誰にも見せない
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宍戸さんは、深い眠りについている。

隣でスヤスヤと眠る宍戸さんの髪に、サラサラと指を滑らせる。
短くなっても尚、その手触りは変わらない。
宍戸さんが長髪だった時は、こんな日が来るなんて夢にも思ってなかった。
ただただ宍戸さんが好きで、少しでも傍にいたいと願っていたあの頃。
想いを伝えることなんて、そんなだいそれたことを想像もせずにいた自分。
毎晩ベッドの中で、想像の宍戸さんを抱いてはいたけど。
宍戸さんが俺のベッドで眠っている。
今でも夢なんじゃないかと思う時がある。
長い片想い期間を経て、ようやく手に入れた愛しい人。
絶対に手離したりしない。
俺は宍戸さんの唇に、触れるだけのキスをした。

「ちょうたろ?」
「あ、起こしちゃいました?ごめんなさい」
そう言って謝ると、宍戸さんは再び目を閉じて布団にモゾモゾと入り直した。
そして俺の体にぎゅっと抱きついてくる。
あぁ、やっぱりだめ。
そんなことされたら。
せっかく我慢してたのに。
「宍戸さん、やっぱ起きて?」
そう言って、俺は宍戸さんの体をゆっくりと揺らした。
今までも、この先も、絶対に誰も知ることない宍戸さんの夜の顔。
もう一度見せてもらうね。
明日は寝不足で辛くなるかもしれないけど。


終わり

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