main

□花火
1ページ/9ページ


「なぁ、鳳も今日の花火大会行くだろ?」
部活が終わり、皆が思い思いにくつろいでいる中、鳳は少し離れた所で幼なじみとじゃれあっていた赤髪の先輩に声をかけられた。
自分に向けられた言葉に、着替えていた手が止まる。
「今日花火大会があるんですか?」
「知らねーの?川の所であるんだ。神社んとこで夜店も出るぜ」
「へぇ」
感心した声を漏らすと、向日は「おまえ、そういうの好きだと思ってたけど、興味ないのな」と言った。
慌てて「そんなことないです」と否定した鳳に、向日が「俺達行くんだけど、おまえも行くなら一緒にどうかなって思って」と誘ってくれた。
すると、二人のやり取りを黙って聞いていた宍戸が口を挟んだ。
「長太郎は日吉とか、クラスの奴らと行くんじゃねぇの?」
「あ、そっか。じゃあ、」
向日が宍戸の言葉に納得したように、誘いの言葉を引っ込めようとしたので、鳳は慌てて否定した。
「いえっ!是非ご一緒させて下さい!」
「大丈夫か?俺らに気ぃ遣う必要なんてないぞ」
鳳が気を遣っていると心配した宍戸は、彼にしては珍しく、鳳を気遣う様子を見せた。
ダブルスを組むようになって、まだ日が浅い。
それでも宍戸を好きになった鳳には、向日からの誘いは大チャンスだった。
(もしかしたら、宍戸さんともう少し仲良くなれるかも!)
そんな期待を胸に、鳳は待ち合わせの時間と場所を確認し、準備をするために家路を急いだ。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ