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□鳳長太郎の溺愛
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「どうした?」
再び黙りこんだ鳳の顔を覗き込んでくる宍戸。
無防備な宍戸の行動が、鳳を煽る。
ギリッと奥歯を噛みしめ、鳳はなんとか自分の衝動を押し止めた。
「いえ。ね、宍戸さん」
「ん?」
「よかったら今日、俺の家に泊まりませんか?」
「いいのか?」
そう言って宍戸は嬉しそうに笑う。
そう見えるのは、決して鳳の思い込みではないだろう。
「じゃあ家に電話しとく」
宍戸は気楽な様子で自宅に電話をかけた。
週末、こうして鳳の家に泊まることは初めてではなかった。
鳳の家は両親・姉が留守がちの為、ちょくちょく誘われて泊まらせてもらっているのだ。
「俺、一人でさみしいんです。宍戸さん泊まってくれませんか?」
そう甘えた声で頼まれると、邪険にできない宍戸は二つ返事でOKしてしまう。
電話の向こうで母親がくれぐれも迷惑をかけないように、と釘をさす。
宍戸は「はいはい」と適当に返事をして電話を切った。

鳳の家に着き、置かせてもらっている自分の服に着替えた。
以前、話の流れで鳳の家に置き服をしていると忍足に話したことがあった。
「それ、付き合ってるんちゃうの?」
忍足に言われ、ちょくちょく泊まりに行くと答えた。
その時の忍足の表情が、フッと脳裏によぎった。
なんとも言い表しにくい、微妙な表情だったのだ。
あれは、一体どういう意味だったんだろう。
「.....さん、宍戸さん」
ハッと顔を上げると、心配そうに自分を見つめる鳳の顔が間近にあった。
「あ、わりぃ。なに?」
「大丈夫ですか?疲れてる?」
鳳は宍戸の頬を両手でそっと挟むと、コツンと自分の額を宍戸の額に当てた。
鳳の手はひんやりと冷たい。
その冷たさが気持ちよいのか、宍戸は頬をすりよせるような仕草をする。
鳳の中の欲望が蠢く。
鳳はそのまま手を宍戸の首筋に回した。
(宍戸さん、ネコみたい。カワイイ......)
なんとなく、そのまま体を寄せ合うようにしていた二人。
宍戸は部活の疲れもあり、そのまま気持ちよさそうにウトウトし始めた。
鳳はそんな宍戸を抱きしめ、耳元で低く囁く。
「宍戸さん。寝ちゃダメですよ?」
宍戸は鳳の胸に顔を押し付け「うん」と素直に頷いた。
それでも目はトロンとして、油断したらすぐに意識を手放してしまいそうだ。
今日も部活の後に鳳と二人、残って自主練もこなしたのだ。
さすがに疲れていた。
鳳はそんな宍戸を良いことに、髪を優しくすきながら更に耳元で囁く。
「ね、起きて。じゃないと俺、襲っちゃいますよ?」
「ぅ〜ん......」
鼻から抜けるような甘い声。
もはや宍戸の意識の半分は夢の中にいるようだ。
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