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□鳳長太郎の溺愛
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宍戸は鳳の心地よい腕の中で、まさに夢と現の狭間にいた。
(きもちいい.....)
鳳の低い囁き声も、耳にかかる吐息も、すごく心地良く感じる。
自分と違い、がっしりとした体格の鳳の腕の中は、こうしているととても安心できる。
もう少し、少しだけ...。
そう思っているうちに体から力が抜け、ズルリズルリと眠りの中へと引き込まれてしまう。
鳳が囁いている内容が分からない。
でも、いつもより低い声でゆっくりと耳元で囁かれると、それがまるで子守歌のように聞こえるのだ。
あまりに心地好くて、動きたくない。
宍戸は面倒で、とりあえず適当に頷いておいた。
「ちょーた...」
そう言いながら、怠い体を鳳に預けた。
もう、自分の足で立っているのも億劫だった。
鳳は宍戸の体を支えながら、傍らのソファーにそっと腰かけた。
そのままぐいと、宍戸の体も乗せてやる。
楽な体勢をとるように体をモソモソさせていた宍戸は、鳳の腰に抱きつくようにしてウトウトし始める。
鳳はすっかり抱き枕状態だ。
嬉しいけど.....鳳は自分の体の変化を苦々しく感じながら、欲望と理性の間で煩悶していた。
下半身はすっかり勃ち上がり、ズボンが苦しい。
でも、宍戸から離れて一人トイレに行く気にはなれない。
はぁ.....。
宍戸の髪を優しく撫でることで、少しでも気持ちを紛らわそうと努める。
(宍戸さんは、俺のこと全然意識してないってことだよな)
無邪気に抱き着いてくるこの行動は、鳳を心から信頼していると言うことなのだろう。
そう思ったら胸がキュウッと締め付けられた。

いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
目が覚めると、宍戸は自分が鳳の胸に抱かれるようになっていることに気づいた。
(うわー.....)
我ながら大胆だと顔を赤らめ、それでもしばらく離れられずにいる。
鳳の腕の中が気持ち良くて、動きたくなかったのだ。
すると、宍戸の気配の違いに気づいたのか、鳳の方から声をかけてきた。
「宍戸さん?起きましたか?」
普段よりも低めの声に、宍戸は妙にドギマギした。
「あぁ。俺、いつの間にか寝てたんだな。悪かったな」
ばつが悪く感じながら、ゆっくりと鳳の腕の中から抜け出すと、ぐぐっと大きく伸びをした。
「長太郎も体きつかったろ?」
自分を支えてくれていたのだから、肩やら腰やらが凝ってしまったのではないか、そんな気持ちで尋ねたのだが、なぜか鳳は顔を赤らめて宍戸から視線を逸らした。
鳳に真っ直ぐ見つめられて、恥ずかしさから視線を逸らすのはいつも自分の方なのに......。
宍戸は不審に思いながら、ジッと鳳を見つめた。
鳳は宍戸の質問から、宍戸を抱き留めていた時の下半身の変化を思い出し、勝手に気まずく感じていた。
「なんだよ?長太郎...」
自分と目を合わせようとしない鳳に、宍戸の機嫌が悪くなる。
鳳は立ち上がると、さりげなく宍戸に背を向けた。
「すみません。ちょっとトイレ行ってきます」
そう言いながら、そそくさと部屋を出た。
パタン、と静かに扉が閉まる。
黙って鳳を見送った宍戸だが、扉が閉まって少しすると、そっと部屋から顔を出した。
鳳の後ろ姿が見える。
(なんだ、あいつ?)
ギクシャクした不自然な歩き方をする鳳に、宍戸は眉をしかめた。
鳳がトイレの中に入ったのを見届け、宍戸もトイレに向かう。
ドア越しに耳をすますと、鳳の吐息が聞こえてきた。
(長太郎?)
「はぁ....あっ....」
鳳の艶めいた声に、宍戸は体が熱くなるのを感じた。
ガザゴソと衣擦れの音もする。
宍戸は無意識のうちに息を詰め、中の気配に集中していた。
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