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□屋上
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「長太郎」
いつもと変わらない宍戸さんの声。
「ししどさん...」
俺の声は情けなく掠れた。
宍戸さんはいつものように手すりに寄りかかって、こっちを見ている。
いつもと違うのは、向日先輩に肩を組まれていることだ。
忍足先輩が向日先輩に何か囁く。
向日先輩は宍戸さんからするっと腕を外すと、俺に向かってウインクした。
「じゃ、俺ら行くな」
二人が屋上を後にし、俺と宍戸さんだけがこの場に残された。

「長太郎、どうした?」
まるで、その場に足がくっついてしまったかのように、俺の足は動かない。
立ち尽くしている俺を不思議そうに見て、宍戸さんは近づいてきた。
「なにか、あったか?」
そう聞きながら、13p上にある俺の顔を見上げる。
かわいい。
愛しい。
想いがそんな想いが溢れてきて、思わず口を突いて出てきそうになる。
それを奥歯を噛みしめることで、なんとか押し止めた。
この人を苦しませちゃいけない。
男同士で恋愛関係になるなんて、潔癖な宍戸さんには思いもよらないことだろう。
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