main

□鳳長太郎のライバル
2ページ/6ページ


「はぁぁぁあ〜」
やってらんねー、と思わず大きなため息が出た。
オレが入手した宍戸先輩情報によれば、先輩はテニス部の中でも最も男らしいタイプって話だったんだけど。

「これからは気をつけるからさ。あんま膨れるなよ、長太郎」
後輩である鳳に好き勝手言われて、優しく宥める宍戸先輩なんて、予想しなかったよ。
軽く頭を撫でてもらった鳳は、光の速さで機嫌を直して、オレに向かって勝ち誇った笑みを浮かべた。
すっげームカつく。
「で?高瀬は宍戸さんになんか用なの?」
暗に、いや、露骨にあっち行けオーラを出す鳳。
オレは知らん顔してやり過ごした。
無言のオレをフォローするように、先輩が鳳に説明する。
「俺が長太郎探してたら、おまえが音楽室に行ったって教えてくれたんだよ」
優しいよなぁ、宍戸先輩。
マジ天使。
オレは宍戸先輩のどんな表情も見逃さないように、ジッと先輩を見つめていた。
「じゃ、そろそろ教室に戻るわ」
軽く手を挙げ、宍戸先輩は出ていってしまった。
その後ろ姿を、鳳と並んで見送る。
「後で行きますんで!宍戸さん!」
鳳の未練がましい叫びに、宍戸先輩は嫌な顔一つ見せず、大きく手を振って消えて行った。
「で、高瀬」
さっきの声のトーンとは打って変わって、低い声で鳳が俺を呼ぶ。
「あ?」
オレはさっさと自分の席に着くと、引き出しから教科書とノートを出した。
「宍戸さんにちょっかい出さないでくれる?」
「出した覚えねぇけど?」
「すっとぼけてもムダだよ」
「なにがだよ」
軽く言い争いになると、クラス中の目がオレ達に注がれていた。
そりゃあそうか。
鳳も185センチとでかいけど、オレも負けずに188センチとでかい。
でかいのが言い争ってりゃ、手が出たらどうなるんだと周囲が冷や冷やするのも当然だろう。
オレは鳳を見ずに「場所変えるぞ」と言って、教室を出た。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ