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□鳳長太郎のライバル3
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昼休み、今は使われてない旧校舎の音楽室で、俺は宍戸さんと二人きりで昼ごはんを食べていた。
お互いに弁当の中身を交換しながら、あらかた昼食を終えた時に、宍戸さんが意を決したように口を開いた。
「なぁ、長太郎...」
「どうしました?宍戸さん」
「俺さ、高瀬に断ろうと思ってんだ」
宍戸さんの口から高瀬の名前が出た時、俺の心臓はドキリと跳ね、そのままドキドキと音を立てていた。
指先が急速に冷えていく。
そんな俺に気づいたのか、宍戸さんが心配そうに俺の顔をのぞき込む。
「大丈夫か?顔色が悪いぞ」
「あ、はい」
無理矢理笑顔を貼りつける。
宍戸さんは俺の指をキュッと握ると、言葉を続けた。
「俺、長太郎とこうして付き合うようになったし、高瀬にはちゃんと伝えないといけないと思うんだ」
俺は泣きそうな気持ち押し隠し、宍戸さんの言葉を黙って待った。
宍戸さんは真っ直ぐに俺の目を見つめる。
「できたら誰に遠慮することなく、長太郎と付き合いたい」
「宍戸さん.....」
「長太郎、俺が高瀬と二人になるの嫌だって言っただろ?」
宍戸さんの言葉に頷く。
「でも、 人前でする話でもないから、どうしようかと思って」
俺の気持ちを考えてくれる宍戸さんの優しさに触れ、自分の嫌らしさ、弱さを改めて実感する。


「高瀬、ちょっといいか?」
教室を出たところで、宍戸先輩に声をかけられた。
俺が先輩に告白してから1ヶ月。
不自然なほど、先輩との接触はなかった。
俺もあえて先輩に近づこうとはしなかったけど、先輩がこの教室に顔を出すことはなかったし、二年の教室があるこのフロアーで見かけることもなかった。
たまに校庭で体育の授業を受けてる先輩の姿を見たりはしていたけど。
その姿を見るたびに、やっぱり俺は先輩のことが好きなんだと自覚して、それと同時に手に入らない存在だと改めて感じていた。
先輩が誰を見ていて、誰を想っているかなんて、そんなことはとっくに分かっていた。
それでも何も行動せず、黙って諦めることなんてできなかった。
報われなくても、先輩のことを好きな奴がいるってことを知ってほしかったんだ。
黙って先輩を見下ろしていたら、宍戸先輩は不安そうに俺を見つめていた。
「用があるならまた今度でも、」
「いや、大丈夫です」
先輩の言葉を遮って答える。
「じゃあ、こっち」
先輩が俺を促して歩きだしたから、大人しくその後に続いた。
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