短編棚M

いつものマンション!
1ページ/1ページ






「たー、だいまー・・・」
「お疲れのようだな」


重い鞄をソファの近くに落とし、
一番に出迎えてくれた赤司君に礼を言う。


「もー今日は困ったお客さんが多いの何の。
 同僚がフォローしてくんなきゃ私今頃死んでた」
「縁起でもないことを言うな、桜」


そう言いながらどこからともなく、ハサミを取り出す。
赤司君に苦笑いだけ返しておいた。

うん、私だと本気じゃないことは知ってるから安心。
それでもビビるのは治らない。

マンションの1階ロビー

大して高くないこのマンションの1階ロビーは
住人達の溜まり場となっている。

何かあるとこのロビーに集まる。
暇だったからトランプしに来た、ホラー映画見る相手募集とか。


「今日は人数少ないね。 気のせい?」
「あー、紅ちんだー おかえりー」
「おー、紫原君だー ただいまー」


奥のソファから、高い身長のわりにトタトタと歩いてくる紫原君

私がソファに手をついて、息整えてる真横に彼が立つ
お、おぉ 相変わらず身長による威圧感は凄いね。


「敦、その距離だと桜が休めないだろう」
「え〜? 何でー?」
「威圧感、って奴だ。 分かれ、敦」


お前は身長2mを超えている。 と紫原君に諭す赤司君

納得したらしく、紫原君は「あ」 と閃いたような
小さい声を上げて、私の真横にしゃがんだ


「これなら大丈夫だ! でしょ?」
「大丈夫だけど、逆に私が子供っぽく見られてないか心配」
「心配するな、見て分かる。 子供には見えない」
「これはどうも」


姿勢を正して起き上がる。
どうせなら座っておけばよかったかな


「これ、紅ちんの鞄ー?」
「そうだよー 今日も今日とてお土産あるよ」
「お菓子ある!?」
「あるある! だからもうちょい待って」


やっぱ座る。 ソファまで荷物を引きずろうとすると
赤司君が後ろから荷物を持ち上げた


「あ、ごめん ありがと」
「気にするな。 疲れた時の荷物くらい持ってやる」
「あー、赤ちんずるー しかもかっこいいし」


ソファに座る私の足元に、赤司君が置いてくれた私の鞄
その鞄の横に紫原君(相変わらずしゃがんだまま)

赤司君は私の座るソファの後ろに立ってた

そして軽い電子音と、エレベーターのドアが開く音


「あっ 桜ちゃん! おかえりーっ!」
「おー、桜 帰ってきとったんか」


さつきちゃんに今吉君。

さつきちゃんはこっちに走ってくるなり、
鞄を飛び越えて滑るように私の隣に座った。

そしてタックル並みの勢いで抱きしめられた


「げほっ、ん さつきちゃんただいまー」
「桜ー 手ぇ離せんとこ悪いんやけど、
 これ教えてくれへんやろか。 サッパリ分からへん」
「はいはーい ちょ、ごめん、私動けないからこっち座って」


首とお腹辺りにさつきちゃんの腕

ぶっちゃけ左腕と、右腕肘下しか動かないけど
毎度のことだからもう慣れた


「さっちんと紅ちん、仲いいよねー」
「ホンマやなぁ 桜も毎度よータックルに耐えるわ」
「今吉さんうるさいです! 桜ちゃん綺麗なんだもんっ」
「お褒めの言葉ありがとー お世辞でも嬉しいよ」


お世辞じゃない! って言って抱きしめる腕に力が入った
うぐ、お腹締まってる!

左隣に座って問題集広げる今吉君


「ちょ、さつきちゃん もうちょい落ち着いて。 ね?
 で、今吉君はどこが分かんないんだっけ」
「この問題なんやけどなぁ、解き方がわからへん」
「・・・あー、これは私も苦戦した。 ちょっと待ってね」


紙と下敷きとシャーペン借りて、自己流解き方。
後ろから赤司君のため息が聞こえたりした


「疲れてるのにこいつらに付き合ってまた疲れてないか」
「だーいじょうぶよー、こうやって皆と話せるのは癒しだもの」


体力は寝て回復するからおっけー
でも精神的疲労はこうじゃなきゃ治んないし

うん、全然苦じゃない


「桜ちゃんって、時たまキュン死にしそうな台詞言うよね」
「しかも笑顔付き。 紅ちんってばサービス旺盛ー」
「そら愛されるやろなぁ」
「え? 何のこと? あ、今吉君それ違うよ」


紙に解き方を書いて、順に教えてく
ふと後ろに気配がして、頭の上に誰かの顎が乗った

納得行ったような顔をした今吉君に、次の問題を解かせる


「後で将棋の相手しろ、桜」
「了解ー、今度こそは負けない。 ん、それ正解」
「ホンマ? おーきに、助かったわ」


その後今吉君が立ち上がって、私周辺をじっと見た


「・・・右に桃井、頭の上に赤司、足元に紫原。
 随分引っ張りだこやな」
「あはは、 ね」


好かれてる、のかな。
そのマンションで一番年上だからかもしれないけど

と言いつつ、最年長の私が19なのね。
最年少が15(高1)なのね、 差がないんだわ

そう言って笑ってると、後ろの自動ドアが開いた


「ただいまーっス! って、うわ!?
 紅咲っち、いつも以上に絡まれてるっスね・・!」
「あー、黄瀬君おかえり うん、絡まれてるー」


赤司君の顎で、動けないまま 声で認識。
すると黄瀬君は、私の座るソファのすぐ近くまで来て


「赤司っちまで・・・」
「うるさい、涼太。 ちょっと黙れ」


酷いっス! と言う黄瀬君を見て笑った。
今日はどうやらモデルの仕事だったらしい


「紅咲っち、ココア貰って来たんスけどいるっスか?」
「いいの? ありがと、貰うね」


今吉君経由でココアが私の手元に。
あ、まだ温かい。


「きーちゃんー 私りんごジュースが飲みたいー・・」
「紅ちん、早くお菓子ちょーだい〜」
「涼太、僕にはコーヒーを」
「ちょ、俺のパシり率高くないっスか!? 2人とも酷ッ」


一応俺も仕事帰りなのに! って嘆く黄瀬君をとりあえず抑える。
黄瀬君から貰ったココアを片手に。


「さて、さつきちゃん、赤司君 一度離れてもらおうか
 ジュースもコーヒーも持ってくるから」


大人しく離れた2人に笑う。


「紫原君、お菓子はもう少し我慢してね?」
「は〜い」
「赤司君、将棋するなら駒並べてくれると嬉しいな!」
「僕に命令・・・、いや 分かったよ」


ちょ、今赤司君 命令するなって言おうとした?

苦笑いしながら、エレベーターに向かう
じゃぁちょっと行ってこよっかな

今日という1日はまだまだ終わらない!



(・・・あ、紅咲さん おかえりなさい)
(あら、黒子君 ただいま。 今ロビーに赤司君達居るよー)
(知ってます。 賑やかな声聞こえましたので)

(やぁ、桜さん おかえり)
(氷室君ただいまー って、あれ お出かけ?)
(友人に借りていた本を返そうと思ってね。 行ってくるよ)
(ん、気をつけてねー いってらっしゃい)





 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ