短編棚M

過去拍手
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※赤司君とキセキマンションの夢主様初対面。
 赤司君中3、夢主様高3 どちらも卒業前。





初めて会ったのは物件看板の前だったような気がする。

当時僕は中学3年の、卒業前で。
学校帰りの鞄を肩に掛けて、看板を見ていた。


「あれ。」


突然聞こえた女性の声。 その声がした方を向く。
見た感じ僕よりいくつか年上で、制服着てたし多分高校生。

そこそこ伸びた黒い髪を高い位置でポニーテールにしていた

その人は勘違いとか気のせいとかじゃなくて、
確実に僕を見ていた。


「・・・何か?」
「や、中学生が物件看板をじっと見てるの 珍しいから」


・・・あぁ、そのことか。

初対面の人に言う意味はないと思ったけど、
僕と同じように隣で看板を見る女性に向かって、口を開いた


「高校生になったら、 一人暮らしをしようと思ってて」
「へぇ、 また若いのに・・・」
「そうですね。 ・・僕も珍しいとは思う。
 高校は電車通学なんだが、何せ家から駅自体が遠いので」


ふーん、 と小さく相槌打った女性は、
掴みどころがないっていうか。

何考えてるか分かりにくいタイプ。

疑問に思い始めたところで、彼女はくるりと僕の方に向き直った


「この辺に住みたいの?」
「駅も近いし・・そうですね」
「マンションの方がいいんだ?」
「こだわりはないですが1人だし・・それで十分とも思う」


その女性は ふむ、と小さく唸って顎に手をつけた
何故か少し笑いながら。


「私さ、今1人暮らしなんだ。 マンションで」
「・・・? はぁ」
「空き部屋ガラガラあるのよ 来る気ない?」
「・・・・はい?」


いきなり何を言い出すんだ、この人は。
初対面の中学生に。

というより、そんなに空き部屋があるなら、
こういう物件に張り紙されてもいいように見えるが・・

と、看板を二度見したら小さな笑い声が聞こえた。


「住人募集張り紙はないよ。 見知らぬ人来てほしくないし。
 っていうか、実質私しか住んでいないマンションだから」


マンションに住人1人? 意味が分からない。
っていうか何を言ってるんだ。

凝視したら、彼女は苦笑いしながら「来てみる?」って言った。


「・・・見に行くだけなら」


よし来た と、パチンと指を鳴らした彼女が
手招きして僕の前を歩いて、案内をした。

怪しい感じはしなかったから、大丈夫・・だと思う。



―――――



「ここ。 私のマンション」
「・・・いろいろと想像以上なんですが」


目の前に佇むマンションは、マンションと言えばそうなのだが。
1人で住むにはあまりにも広すぎる家であった。

白と淡いクリーム色を足して2で割ったような外観は、
横から見ると、どう考えても屋敷レベルの奥行き。


「入っていいよ」
「あぁ、」


手動ドアから、続いてガラス張りの自動ドア。
入って一歩、唖然とした。 ロビー? 大広間? が広すぎる。

マンションってこんな建物だっけ、と。

大きなテレビも置かれて、端にテーブルやカーペットと
くつろぐ場所が3箇所ほどあった。

そんな僕を見て、彼女は小さく笑った。


「っくす、驚愕。 ・・って、顔に書いてある」
「・・・僕が想像していたマンションじゃない」
「そのうち慣れるって。 ところで家具ありの空き部屋か、
 家具なしの空き部屋か、私の部屋か。 どこ行く?」
「じゃぁ、 家具ありの空き部屋で」


ん、 と短い返事をして、真っ直ぐ先に進む。
どうやらこのマンションにはエレベーターもついてるらしい

連れられてエレベーターに乗って、2階で降りて。
少し歩いたところの部屋の扉を開ける


「同輩とかが遊びに来た時用に、置いてた家具がそのままなんだー
 後5部屋くらいは、こんな空き部屋があるんだけど」


玄関を抜けて、廊下を真っ直ぐ進むとリビングに着いた。

ダイニングテーブルやカーペット、
住んでる気配はしないものの、十分に過ごせそうな空間ではあった


「・・・・もうこの時点で十分に暮らせそうですね」
「とは言っても、冷蔵庫とか洗濯機がないけど」


彼女はそう呟きながらリビングの電気をつけて、
ダイニングテーブルの椅子に座った。

習うように、向かいの椅子に座る。


「さて。 お気に召しましたかしら?」
「あぁ、 僕にはちょっと勿体ないぐらいだ」
「初対面でも引っ掛けてきた甲斐あったなー」


笑いながら机の上で腕を組む彼女を見て、
そういえば名前も知らない初対面だったと思い出す。


「・・・差し支えなかったら、名前。 教えてほしいんですが」
「ん、そういやまだだったね。 紅咲桜。
 高校3年生、と言っても もうすぐ社会人」


よろしく と言って差し出された手を少し見つめて、
手をとる前に、少し顔を上げた。


「帝光中学、3年の赤司征十郎です。」
「赤司君ね?」
「はい」


差し出された手に、自分の手を伸ばして握手した。

まだ住むと決めたわけじゃなかったけど、
紅咲桜と名乗った彼女と握手して、確信した。

僕がこのマンションの住人になるのも、
2ヶ月としないうちだろう、と。





(赤司君って帝光中なんだっけ・・部活とか何やってた?)
(男子バスの主将を、 去年から)
(マジか! 私も中学の時、女子バスだったんだー)
(紅咲・・さん、も バスケを?)

(高校に入ってからはもっぱらストバスだったけど。
 にしても君、さん付けは苦手そうだね。 好きに呼んでいいよ?)
(それじゃ紅咲・・・、で。 ・・いいですか?)
(おっけ。 ・・・にしても帝光中男子バスの主将かぁ・・)
((あれ、もしかしてキセキを知らない人だったか・・?))







赤司君と夢主様の初対面会話でした。

初対面で年上だからと、敬語使うけど
やっぱり違和感バリバリな赤司君。

赤司君は最初、夢主様のことを苗字呼びですが
2週間ほど絡むと、急に苗字呼びから名前呼びに変わる仕様です。


拍手ありがとうございました!
ふと見に来たくなるような小説を書けるようになりたい。


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