短編棚

ヒッキーな幼馴染と俺の話
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ごめん、黄瀬君と話があるから と
和成が先にデパートに向かったところで、

外の噴水のある公園のベンチで一息ついた。


「俺と話って?」
「撮影前の質問。 今答えようと思って」
「・・・聞こえてたんスか」


隣に座り苦笑いする黄瀬君見て、小さく笑った。
耳はいいらしいから、とも添えて。

そうなんスか、と言った後、黄瀬君は目の前の噴水に視線を向けた。


「・・俺はね、割りと小さい頃から周りに誰かが居るのが当然で、
 1人の時間が少ないくらいなんス」
「・・・うん」
「少なくとも俺はそういうものだと思っていたし、
 1人で数時間なんて方が違和感感じるくらい周りには誰かが居たんスよ」


うん、と相槌を打ち 一瞬黄瀬君の横顔だけ見て、
私はまた噴水の方に目線を向けた。


「・・だから、っていうか。 まぁ高尾君が居るかもしんねースけど、
 高尾君が学校の時は桜ちゃんは家に1人じゃないスか」
「まぁ、仕方ないしいつもだし」


そして黄瀬君は少し私の方に顔を向けた。







「どんな気持ちで、過ごしているのかなって」


酷く落ち着いた声が耳を通る。
それを聞いて少しだけ目を瞑りまた開いた。


「どんなって、別に何もないよ。」
「え」
「私は1人の方が落ち着くし、寧ろ大勢に囲まれるのは苦手」


怖いんだよね、って付け加えたら
それはもう目を見開くように驚かれて。


「多分黄瀬君とは真逆のタイプかな。
 学校も何故かよく思われなかったりして。」
「・・・・」
「両親の仕事が忙しくなる前から1人で。
 ・・家隣なのに、和成が心配だからって私の家で住むようになって」


1人の時間は割りと減ったけど、
それでも『普通の人達』よりは断然1人の時間は多くて。


「でも別に寂しくないよ。 好きなこと見つけたし、やりたいこともある。
 見えなくても、地球のどこかで誰かが、喜んでくれる人が居る」


寂しくなんてないよ。

そう言えばまた少し驚いて、黄瀬君は凄いっスねと微笑んだ後、
これからも応援してるっスとカメラの前とは違う笑みを浮かべた





どうやら真逆の彼と私





 
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