WT短編

□#ワートリプラスまとめ
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風間蒼也




寝不足気味だとお前はわざわざ作戦室にまでやってきた。
俺の肩に寄りかかり眠る彼女の様子を一瞥した菊地原の視線が不意に俺へ向く。
「涼しい顔して緊張するんですね、風間さん」
「……好きな女が居れば多少は」
「へー……へぇ……」
……なんだその意味深な反応は。
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「ごめん、」
いつになくか細い声で服の端を引っ張られた。
足を止めて振り返れば俯いた彼女が居る。
「…………傍に居て、」
執着が薄い彼女が初めて見せた執着。
珍しい様子に驚く反面、嬉しさを感じてしまった自覚もあった。
……了承の言葉を述べるのはそう難しくない。
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一緒に寝ようと彼が寝てるベッドに潜り込もうとした。
察した彼は奥の方に寄ってくれる。
足を滑り込ませた瞬間、足にじんわりと熱が。
「わ、風間さんあったか」
「子供体温と言われる」
「っふふ」
「……」
「ごめんごめん」
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「掛け布団要らないね」
「タオルケット出すか」



足元に咲いていた花を撮ろうとスマホを取り出ししゃがむ。
ぱしゃり。
上手く撮れた、満足気に笑うと蒼也さんに名を呼ばれる。
しゃがんだまま顔を上げたら、太陽が彼の頭に遮られてそのまま小さくリップ音。
「…………」
「これが身長差か」
彼は満足気だけど、あの、外……
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「っ、ぎぇ……」
「……変な声だな」
変な声を抑えた結果変な声と言われるのは女としてどうなのか。
現実逃避じみた思考を頭の端に押しやるより先に彼は耳を軽く噛んでいく。
「っん、」
即座に口元を覆う。
「……抑えなくていいんじゃないか?」
「……恥ずかしくて、あの……」
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「風間君となら楽しいよ」
随分な殺し文句に心臓を掴まれるような、
今すぐその細い手を掴みたくなるような情動、を、抑えて繕い相槌をした。
顔に出るのが少なくてよかった、
「風間君変な顔してる」
……何故気付く。
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「……はー……」
「?」
「いや、なんでもない」
「そう?」



[起きてる?]
[もう寝る]
簡潔な返事は彼らしくて思わず笑った。
寝るなら別にいいやと既読だけ付けスマホの画面を落とした矢先、通話が掛かり慌てて電話を取る。
「か、風間さん」
「寝付けないのか」
明らかに眠そうな声、わざわざ相手してくれる優しさが余りにも愛しい。
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キスされかけて、口元を手で覆い、それを退けようと手首掴まれての攻防数秒。
「……お前からの頼みを聞く、というのは?」
と、取引か。
「……じゃぁ、デートしたいです……」
「安いな」
クツクツと笑う彼、了承したのか掴んでた私の手首を離した。
「ならその時に貰う」
「!!」
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どうして。
私の周囲は時間が止まったというのに彼は何事もなかったかのように黙々と食べている。
「そ、蒼也今なんて」
「伝わらなかったか?」
蒼也は一旦箸を置き左手を出すように催促した。
「お前がいい」
薬指を撫で付けあまりに真剣な目で射抜くから思考回路全部飛びそう。
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余程酔っていたらしい、同い年連中の酒の場で告白されるとは。
まぁ酒入ってるしな、と本気にせずにいたら翌日張本人から呼び出しを食らった。
「昨夜は悪かった」
「平気平気」
「酒の勢いで言うつもりはなかったが嘘はない」
「へ」
「考えておいてくれ」
いやいやいやちょっ、
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傘忘れて雨を眺めてたら想い人から入るかと誘われた。
「傘大きいね」
「傘忘れた好きな奴呼んでも濡れづらいだろう」
「えっ」
「冗談だ」
……驚いた、心臓に悪い冗談。
「……そっかぁ残念」
「え」
小さく呟けば彼が足を止め、釣られて私も止まる。
#ワートリプラス
数分間傘の下で見つめ合った。



寄りかかられたまではよかったが思ったより体重掛けられて身体が傾く。
「おおお、重い! 風間重い!!」
「失礼な」
「鍛えてんだもん重い」
「愛の重さだ」
「うそ、風間そんなこと言うの? びっくりした」
「我ながら似合わんなと思った」
#ワートリプラス
「あながち嘘ではない」
「嘘でしょ?」



机にうつ伏せて眠る風間、ここまで隙だらけなのは珍しい。
そっと手を伸ばすと狸寝入りを疑うほどの速度で捕えられた。
「……だれだ」
「ご、ごめ、私、」
「…………そうか……」
謎の納得をした彼は再度すこんとうつ伏せた。
……え、寝るの?
#ワートリプラス
(あれっ、手解けない……!?)



余りのだるさに講義休むから出欠よろしくとだけ連絡投げた後眠ったらしい。
私を呼ぶ声に意識が浮上した。
「おい、生きてるか」
「あ、れ、風間……? なんで、」
「お前が合鍵寄越してきたんだろう」
「そうでした……」
「食欲あるなら何か作るが」
「……おかゆ……」
「了解」
#ワートリプラス



友人数名と屋台巡りの最中、風間君達と鉢合わせた。
立ち話して、それぞれ屋台見に行くから別れかけた矢先、
浴衣の裾を軽く引っ張られて顔を向けたら赤い瞳。
「似合ってる」
「っえ、あ、ありがと、」
その後彼は普通に連れの後を追ったけど、
あの、今の褒めは私にだけですか?
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彼の胸元に寄れば落ち着いた心音だった。
「風間さん心音ゆっくりですね」
「そうか?」
ドキドキしてるのは私だけか、と少し残念に思う。
「これでも速いんだが」
「え」
あ、そういや運動量多い人って心音ゆっくり、
「うるさくて敵わん」
……寧ろ普段の遅さを聞いてみたくなった。
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「食いに行かないか」
ぱらりと見せられたチラシは私の好きそうなデザート。
行くと即答してるんるん気分で予定を決める。
「……あれ、こういうの好きだっけ?」
でも風間なんでも食べるしな、質問はなかったことに、と謝罪一言。
「お前を誘う口実に過ぎないからな」
……おや?
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ありゃ起きてしまった。
ベッドから這い出ようとしたら手首を掴まれた。
「どうした」
「目が覚めて、 水飲もうかと」
「俺もいく」
声色が普段と全然違う。
「蒼也まだ寝てるから机とかにぶつけちゃうよ、」
「おきてる、いく」
折れたけど30秒後に鈍い音が響いて彼の目は覚めた。
#ワートリプラス



少し飲みすぎてしまった。
家まで送ってもらったが、足早に帰ろうとする服の裾を無意識に捕まえた。
「まって」
驚いた顔が振り向く。
「もう少しいてよ」
変な誘いじゃないけど酔いのせいか1人が寂しいんだ。
#ワートリプラス
「……酷い殺し文句だな」
「はえ?」
酔うほどではないが素面でもない。



「仮眠取る、ベッド借りるぞ」
「はい、おやすみ」
「おやすみ。 ……」
「……蒼也が仮眠しにきた日の夜って落ち着かないのよね、蒼也の匂いして、」
「……何故このタイミングでそれを言うんだ」
「ごめん」
「寝づらいんだが」
「ごめん」
溜息を吐いた彼の鼻を掠めるのも彼女の匂い。
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前々から約束してた日に車で連れ出し片道2時間。
「はい、食券2000円分。 奢り」
「……グルメイベント」
「好きそうかと」
「お前の趣味ではなく?」
「半分くらい」
正直に答えたら妙に笑われた。
「成程、ならお前のお勧めから行こう」
#ワートリプラス
「風間のお祝いなんだけどなぁ」
「いいんだ」



遠出になると度々タクシーを頼まれる。
「まぁ私運転好きだしいいけどさぁ、電車でもよくない?」
「電車だと見れないものもあるだろう」
「サービスエリアとか?」
「そういうことにしておく」
「渋いな。 引っ掛かる返事だけど」
#ワートリプラス
運転中の横顔とか、自分よりはしゃぐ様子とか。



「炊き込みご飯とか食べたくなる季節ですね」
「なるな」
「ところで炊き込みの素とかって3合用が多いんです」
「そうだな」
「私一人暮らしなので3合1日で消費できないんですよね」
「あぁ」
「回りくどくなったけど炊き込みご飯食べに来ませんか?」
「断る理由がない」
「やった!」
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まだ隣で眠る彼の腰に抱き着いて二度寝キメようとしたら、
ちょうど目覚めたそうで腕の中がもぞりと動いた。
「おい離せ」
「ぐー」
「狸寝入りめ」
「すぴー」
「口で言う奴が居るか」
盛大な溜息吐いた後に頭を撫でられた。
「それはそうと俺は時間だからそろそろ出る」
「ああああ」
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「そろそろカイロ持ち歩こうかな」
「冗談だろう?」
疑った風間が手をぱしりと掴む。
「冷たい」
驚きの声、一頻り私の手を触って不意に止まる。
……じわりと浮かぶ熱に俯く私の視界の端で、見つめている彼が映った。
「……見なかったことに……」
「……聞けない頼みなんだが」
#ワートリプラス



日帰り可能の隣県ゆえに突発的な帰省は度々ある。
実家に顔を出すとの予定を聞いた風間は数秒考えた所作。
「俺も行っていいか」
「え゛」
付き合ってもないのに?
「挨拶ではなく」
焦った。
「お前が過ごした街を歩いてみたかった」
「……いいよ、おいでよ」
なんか断れなかった。
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「髪染めようかな」
傷みか生まれつきか、茶色っぽい地毛を持ち上げながら言ったら
「今のままでもいいと思うが」と返された。
「風間の隣は黒髪のが似合う気がして」
「……そう言われると黒がいいと言いたくなる」
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「ネイルは赤ね」
「……お前のそういうところが心臓に悪い……」



やってしまった。
後悔に沈みながら咀嚼音を響かせたら「珍しいな」の声。
「食べる?」
「いいのか?」
「ポッキーの日とかいう売出し文句と安さの誘惑に負けて……」
「なら遠慮なく」
笑みを堪えながら伸びる手。
……誘惑に負けて話し掛けられたならこれが正解だったのかも。
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「好きな人はまず胃袋から掴むって言うし」
「……修行をしている?」
「ついでに掴まれてくれないかな的な」
ご飯準備の傍らの話題、顔を背けてたからできた発言に熱が籠もる。
「ほぼ告白だな」
「ソウッスネ……」
「修行でなければいいと思った」
「……?」
「……ほぼ告白だぞ」
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「機嫌良いね」
鼻歌と指摘したら半ば無意識だったらしく驚いた顔。
「それ私の好きな曲」
「まぁお前で知った曲だからな」
「えっ教えたっけ?」
「多分鼻歌だった。 妙に耳に覚えてるがまだ原曲聴いていないしタイトルも歌詞も知らない」
「げ、原曲聴いて」
流石に気恥ずかしい。
#ワートリプラス



告白、されたまではよかった。
よくない。
急かすつもりはないと残され、その言葉に甘えながら日常を過ごしていた。
告白の事実が消えるわけもなく脳裏の端に潜んでる。
忘れてない、忘れてはないけど。
「充分待ったつもりだが」
掴まれた手首が、逃がさないと訴えている。
#ワートリプラス



「12月ですわよ奥さん……」
「誰が奥さんだ」
「信じられない……この間年明けたばかりなのに……」
「何ヶ月前の話をしてるんだお前」
尚冷静に指摘する彼は半纏羽織ってこたつの中で震えている。
「今年も風間が猫みたくなる季節が来たな……って気持ち」
「付き合い長いな……」
#ワートリプラス



食生活が杜撰な自覚はある。
朝ご飯食べないのと答えれば後日1限開始前に呼び出された。
「お前の好みが分からないからそれらしい物を買った」
「……風間さん、私朝からこの量は入らない……」
「入る分だけでも入れておけ。 余るなら俺が食う」
……しょ、食生活が矯正される。
#ワートリプラス



「こんなところで年賀状か」
「ばたばたしてていつのまにかこんな時期に……」
絵を嗜む身ゆえせっかくなら手書きにしたい、所要時間はそれなりだが。
「……絵が可愛いな」
「あ、要ります……?」
「俺も余った年賀葉書があるから交換でどうだ」
思いがけず住所を知ってしまった。
#ワートリプラス



「おはようございます」
「おはよう」
「時に風間君、本当に今更な質問だと重々自覚はしているのですが、
 本日のご予定はどうなっておりますでしょう」
「そういえば言っていなかったが正午から任務がある」
「あっ……じゃぁケーキ作ってお待ちしてますね」
「ん。 待ち遠しいな」
#ワートリプラス



同い年連中で年越し宅飲みだと大晦日と正月を共にした。
飲み過ぎ勢ももう起きるし昼ご飯作ろ。
比較的飲んでなかった風間が手伝おうとキッチンへ。
「そばか」
「うん」
「年越しそば」
「違う多分胃に優しいと思って」
「年越したそば」
「やめよう」
「年越されたそば」
「風間」
#ワートリプラス





 
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