WT短編

□#ワートリプラスまとめ
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出水公平




「これな〜んだ」
「水族館のチケットだ!」
「2枚ありま〜す」
「おぉ!」
「一緒に行かね?」
「行きます!!」
即答すれば彼は笑った。
「可愛い格好してきてよ」
「え。 ……で、デートみたい…」
「おれはデートのつもりなんだけど」
ダメ?と首を傾げた出水君にどきり
#ワートリプラス
私は死んだ



約束してた水族館。
「わ〜人多い」
「休日だしな」
「迷子になったら呼び出ししなきゃね」
「やだよ高校生にもなって」
クツクツと笑う彼が不意に手を差し出してきた。
「手、」
繋ぎたい。
……数秒後理解した私は蹲った。
#ワートリプラス
「生きてる?」
「しんでる……」
「死んでるのかぁ……」



「そんなにおれ嫌?」
「男の人に免疫ないだけ…」
「あ〜」
顔隠したままの私に出水君は成程なぁと頷く。
「……いや別に免疫なくていいんじゃないかな」
「……」
「おれにだけ免疫ついたら」
「そういうとこだぞ出水ィ!!」
#ワートリプラス
「おっ呼び捨て珍しい」
「死のう」
「生きてよ、ねぇ」



「死にたいくらい恥ずかしい……」
「生きろって。 まぁ事あるごとにお前顔赤くすっから
 おれに口説き耐性ついたけど」
「悔しいから出水君も赤面して……」
「最初はガチ照れしてたんだけど」
「見てない……」
「そん時のお前はおれの倍くらい顔真っ赤だった」
「見そびれた……」
#ワートリプラス



「確か今日だったよね、何か欲しいものとかある?」
「あ〜……」
たっぷり数秒声を発した後、俯くように若干頭が揺れる。
ボーダーの彼は自分で粗方買えるのだろうけど方向性くらいは聞きたい。
「……お前の時間、とか?」
「え、」
「デートとか、どうすか」
…………し、しぬ。
#ワートリプラス



[見て新しい寝間着]
ピース付きの自撮りを見て表情が緩む。
センスは相変わらずだけど。
[写真で姿見れるの嬉しいけど、見るたび会いたくなっちゃうな]
数十分前のメッセージにそう送れば数秒で既読が付く。
[待って明日会いに行くから]
思い立って来れる距離じゃないよ!?
#ワートリプラス



久々の飲みだったのにドタキャンされた。
「ありゃ、残念っすね」
「すっごい残念……」
愚痴半分に伝えたら予定知ってた彼は納得顔。
「なら代わりに、おれと喫茶店でもどうすか?」
降って湧いた誘いに見上げれば良い顔。
「年下とは嫌ですか? お姉さん」
「……滅相もない……」
#ワートリプラス



「チョコくーださい!」
「潔く来たわね……」
「去年は義理チョコ持ち歩いてたので!」
いやほんと潔いな最早清々しい。
「ほらあげる」
「おっ、やりぃー」
貰った〜義理だけど!と報告する後ろ姿見ながら、
渡したそれは不特定の誰かに用意したものではないゆえ正直催促助かった。
#ワートリプラス



「義理チョコごちでした!」
彼が姿勢よく差し出した包みを受け取る。
そうか、ホワイトデーか。
「……今更な暴露をすると」
「お?」
「義理じゃなかった」
意味が通じたのか、一瞬慌てた様子の彼は呻いて片手で顔を覆う。
「……こっちも貰っといて」
最初よりも随分上等そうな。
#ワートリプラス



「ざっとこんなもん?」
さらっと行われた凄技に拍手を送る。
「流石A級1位」
「さんきゅ」
「転向して弟子にしてもらおっかな」
「えぇ……」
「面倒?」
「いや、ん、んー」
煮え切らない返事だな。
「正直吝かじゃないけど、攻撃手の方が連携取りやすくね?」
「……あー究極の二択」
#ワートリプラス



「ずっとニヤついてんじゃん」
「ポーカーフェイス保てなくてつらい」
脈絡もなしに不意打ちでプレゼントを貰った。
緩む頬を揉みしだきながら表情筋のコントロール権を手に入れる。
「なーんか昔から嬉しいことあるとニヤけちゃうんだよねぇ」
「なんか可愛いこと言ってる奴居るなぁ」
#wtプラス



やり始めたら熱中して止まらないタイプだと思う。
「はいストップ」
「んが」
ぺたりと目を塞がれ頭ごと引かれ作業を中断させられる。
「休憩」
「そんなやってた?」
「そんなやってた」
なら休むか、とぐっと背伸び。
「そんで構って。 彼氏暇させていいんですか〜」
「わぁごめんごめん」
#wtプラス



「うわ、スマホどこ行った?」
「鳴らそっか?」
「頼むわ」
どこからか耳慣れない音楽、出処から探し物も発掘した。
「サンキュー助かった」
「……着信そんなだっけ?」
「あ」
デフォルト使ってた印象なんだけど。
少々バツ悪そうに目を逸らされた。
「や、お前のだけ、着信音変えてて」
#wtプラス



「名前で呼んでほしい、んだけど」
恋人なら不思議でもなんでもない普通の要求だったが、私はしばし硬直した。
自慢じゃないが、小学生時代の友達を呼び捨て安定させるのに数ヶ月費やしたのだ。
「っこ、……こう、」
「……」
「っ、2ヶ月ほど待っていただけないでしょうか……!?」
#wtプラス
腹筋が攣るんじゃないかってくらい笑われている。



「それどうしたの?」
「さっき出水が逆チョコだってくれたんだよ」
昇降口で目が合った後、そのまま流れるように手渡されて。
バレンタインに男子からチョコ貰う体験は初めてだ。 新鮮だ。
「皆も貰わなかった?」
「いや?」
「わたしは貰ってないけど」
「アタシも」
「……ありゃ?」
#wtプラス




 
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