WT短編

□#ワートリプラスまとめ
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迅悠一





どのような人間にも等しく並行に未来が見える。
今こうして話す君にも見えている。
日常を過ごす彼女の未来は不確定だ。
「明日は良いことありそうだ」
「お、それは予知?」
「ううん、なんとなく」
「あら珍しい」
#ワートリプラス
瞼を上げると未来が浮かぶ。
瞼を落とすと君の顔が浮かぶ。



事前情報ではタイマーを仕込んで眠るそう。
真夜中に女の子の部屋に訪れるのは流石にどうかと思いつつ、
毛布を中途半端に被ってぐっすり眠る彼女の様子を見てからエアコンを消す。
「(喉痛そうだったんだよな、明日)」
消し忘れて喉が焼けたらしい。
#ワートリプラス
彼は今日も暗躍している。



誰も居ないダイニング、ソファに体育座りでぐすぐすと1人酒。
「うわ珍しい」
物音と声に顔を上げれば珍しくラフな格好の迅君。
「今日は何も上手く行かなくて」
「そっか、でも明日は良い日だよ」
そしてお決まりの台詞。
「おれと明日遊びに行こうよ」
涙も引っ込むほどのレアな誘い。
#ワートリプラス



「昨日会いそびれたから、1日遅れだけど」
はい、と手渡された箱は既視感。
(っあー……今日か……)
薄々見えていた未来に期待して、
当日顔見ることすら叶わずヘコんで、
通り過ごしたものが今。
「実力派エリート、ありがたくいただきます」
「ぜひ」
不意打ちでも食らった気分だ。
#ワートリプラス



「たん、じょうび……?」
「そうだよ」
「人の子だったんですね……」
「失礼だな」
笑われた。
傍で聞いてる1位の彼にも爆笑されている。
「何かお祝いとか、私にできることがあれば」
「ん? んー……」
考える仕草でじっと見つめられる。
「どうしよう、いろいろ見えるけど悩むな」
#ワートリプラス



「キスして」
「どこに?」
「迅君の好きなところ」
そう返せばほぼノータイムで唇を塞がれた。
「やっぱり、って思っちゃった」
「お気に召した?」
「うん」
頷く私に笑み1つ浮かべた彼はぐっと背伸びした。
「踊らされるのがお前の手の平ならそれも悪くないかなぁ」
「……凄いこと言うなぁ」
#wtプラス
「考えなしというわけでもないよ」
「重い……」
「ふっは」
おれ達はきっと死ぬまで共犯で。



「来世とか考えたことある?」
突飛な質問に考えたことないと返答した彼が来世について考え始めた。
「うーん、あ、でも暗躍は続けたいかなぁ」
「『来世は忍者になりたい』とかどう?」
「いいね面白そう」
ケラケラ笑う彼が小さく、来世か、と呟く。
「お前が居るなら来世も楽しそうだな」
#wtプラス



「はい、お迎えに来ましたよ」
「迅! え!?」
突然の雨に軒下で立ち尽くしてたら、前触れもなく彼がひょっこり現れた。
「なんて完璧なタイミング。 ちょうど今連絡しようと思ってたの」
「まぁ実力派エリートですから?」
「あはは!」
#wtプラス
「ところで傘1本?」
「おれも帰り道だから許して」



先日具合悪いんだよねと近況報告程度に言ったら、
おれ医者じゃないし病院行った方がいいよと至極当然な返事をされた。
[ねぇ、入院沙汰になった]
[よかった]
[よくないよ。 いや感謝してるけど。 手術だって、めっちゃ怖い]
[お見舞い何欲しい?]
[予知だけ持ってきて、慰めて]
#wtプラス



迅を捕まえて愚痴を聞いてもらうことにした。
「想い人は忙しそうで全然会えないし、片想いに気付かれてるかも怪しいし」
成人してたら今絶対やけ酒してるのに、とぼやきながら机に突っ伏す。
ろくに相槌も打たない彼が複雑そうに眉を寄せた。
「……お前、そういうの本人の前で言う?」
#wtプラス



至極真っ当な助言に従ったら入院沙汰。
「手術と聞いたらバックレそうだから」
「診察受けさせて病院放り込もうって? そりゃないわぁ……」
ありがたいけど心の準備がさぁ。
頬杖で溜息つく私に彼はクツクツ笑う。
「治るよ、おれのサイドエフェクトがそう言ってる」
「……知ってます」
#wtプラス





 
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