WT短編

□#ワートリプラスまとめ
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村上鋼





「え、名字村上?」
「? はい」
「私もなの」
「えっ」
同い年、同じ名字、ボーダー隊員、
共通点が多い分仲良くなるのは早くて、ある日を境に付き合うようになった。
「おめーら名字一緒だから結婚しても分かんねぇな」
何気ない同級生の発言。
…………2人して思わず赤面した。
#ワートリプラス



「誕生日おめでとう、これ」
「わ、ありがと。 覚えてたんだ、相変わらず記憶力良いね」
プレゼントを見れば過去に私が好きだと言ったものだ。
鋼君は何度か瞬きをすると少し表情を和らげる。
「……流石に興味ないことまでは覚えられないよ」
#ワートリプラス
「……成程?」
「分かってないな」



「ボーダーって、何」
説明されると侵攻のニュースをぼんやり思い出した。
「そっか、スカウト……行くの?」
「それなんだけど、お前も来ないか」
「え」
最初よりも素っ頓狂な声を出す私に鋼君がバツの悪そうに頬を掻く。
「巻き込みたいというより、離れたくないだけなんだけど」
#ワートリプラス



指摘されて気付いたけど私は癖が多いらしい。
「焦った時は髪触るし、眠い時は1回の瞬きが長い」
「よく見てる〜」
「お前限定で心読めるかもな」
冗談めかして笑う鋼君。
ふむ、焦った時髪を……と思えば既に髪を弄る指先。
「……」
「どうした?」
好意がバレるのも時間の問題か?
#ワートリプラス



たまに一度昼寝に付き合ったら、最近呼ばれることが増えた。
「今更だけどさ、私居ると寝返りとか打てないし寧ろ寝づらくない?」
「…………」
なんで口噤むの。
いかにも不服だと表情で訴えたら僅かに笑われた。
「……なんとなく、忘れられなくてな」
抱き寄せる力が強まった。
#ワートリプラス



以前一瞬だけ話題にしたそれに彼の視線が向いていた。
「お前が好きだって言ってた物を見るたびにお前を思い出すよ」
「……す、すてきだね?」
意図を汲みきれず困惑しながら返事したら「ふは」と笑われた。
「そうだな、素敵なことだと思う」
……妙に目が優しくて落ち着かない、
#ワートリプラス



「……オレそんなこと言ったっけ」
「言った! 絶対言った!」
昔話で懐かしい話掘り起こせば珍しい展開。
「なんか意外、覚えてないこともあるんだね」
「まぁ忘れるからな……あ、でも」
「?」
「心に残った発言は状況も感覚も丸ごと覚えてる」
告白の時とか、とぽそり呟かれた。
#ワートリプラス



「言うか迷ってたんだけど、」
「んー?」
「……近い、」
「え、わ、ごめん!」
慌てて離れたら顔が困ってた。
またやってしまった、これだから距離が近いと怒られるんだ。
「攻撃手の懐に素で潜り込むコイツこえーよな」
「失礼な」
「まぁ、うん、そうだな」
珍しく曖昧に笑う顔。
#ワートリプラス



彼の額に自分の額を当てたが、熱はなさそうだった。
閉じていた目を開き、驚いたように瞬く彼は「ごめん」と謎の謝罪、なんでだ?
……思えば、初回盛大に失敗してから、キスする前は額同士を当てるのが合図で、
「……あっ、成程?」
「忘れてくれ」
「え、かわ、いやごめん」
#ワートリプラス



「残りの日誌オレやるよ」
「なら、お願いしようかな」
「あぁ」
ただのクラスメイトに過ぎない彼にラブレターを送り数ヶ月。
それをどう感じたのか私に知る術はないが、
彼も明記のない差出人を特定できないゆえおあいこだ。
……ところで、日誌を広げた彼の手が止まっている?
#ワートリプラス



「助けてくれ」
ガタガタッと物音が響いたかと思えば若干青ざめた様子の彼が慌ただしく出てきた。
「えっ何??」
「くもが」
「クモガ?」
「虫の」
蜘蛛か。
「あ、蜘蛛ダメなの? Gとか平気なのに」
「……小学生の頃に夢で食べられてから、ちょっと……」
「あっ……了解、どこ居た?」
#wtプラス



「髪邪魔そうにしてるな」
「え?」
「何度も耳に掛け直してる」
「マジ? 完全に無意識だった」
確かに少し伸びすぎたかもしれない。
鞄からヘアゴムを取り出して髪を1つにまとめる。
「……随分しげしげと見てくるね……」
「いや、新鮮だなと思って……ごめん」
なんの謝罪なんだろう。
#wtプラス
普段隠れてる首やうなじが晒される瞬間とか、
黒い髪に白い指先が埋まる様子とか、
自分が行なったことのない動作を平然とこなす手付きとか、
「(……女性、なんだな、と……)」



「花好きなんだな」
「え」
「いつも目奪われてる」
「えっうそ鋼君に覚えられるレベル?」
「オレ以外も気付いてると思うぞ」
それはそれで照れるけど!?
ふと彼は道を逸れ花の前でしゃがみ、何の花だろうなと呟く。
「……花愛でる鋼君可愛いね……」
「……照れるから言わないでくれ」
#wtプラス



久しぶりに地元に戻り、近況報告も兼ねて幼馴染と夜の散歩に繰り出した。
「昔から月とか星とか好きだよな」
「大好き」
「今だから言えるけど」
住宅街を2人で並んで歩き会話が一段落した頃。
夜空を見上げる彼女を見て思い出した、
いつか言おうと思い眠らせていた話をすることにした。
「『月が綺麗!』ってはしゃぐ小学生のお前の声が随分綺麗だったことをずっと覚えていて」
「え、照れる」
「その後中学の時に『月が綺麗ですね』で告白の訳があると知って、1人で勝手にドギマギしたことがあった」
「あっはは! 何それ可愛い! 数年越しに深読みしちゃったんだね?」
「そう」
確かに挙動不審な時期あったな〜と一頻り笑った彼女が顔を上げた。
「ね」
「ん?」
「星が綺麗ですね」
……時間が、止まったようだった。
派生した言葉が存在するのを知っている。
詰まらせた息、彼女の瞬きだけが時間の経過を教えていた。
「……知ってる?」
……ど、っちの意味だ、これは、
#wtプラス



モテないということはないだろう。
記憶の件もあるし、前例があるならアプローチにも気付くだろうと踏んでいた。
「にっっぶいよ!!!」
「……!?」
糸が切れた。
「こちとら一目惚れなんですぅ!!」
「!?」
あ、でも彼がここまで狼狽える様子は初めて見るし、ちょっと面白いかも。
#wtプラス



「今夜少し外出ない? 流星群なんだって」
そう伝えたら一瞬固まった。
すぐ後に承諾されたけど気になったので訊く。
「数日前に見た夢を思い出せなくて」
「うん」
「言われてみれば流星群だったなって」
「おっ! 綺麗だった?」
「見事だったよ」
「正夢にしよう」
「あぁ、素敵だな」
#wtプラス



夜型だしいつでも連絡していいよ〜、なんて緩い会話を随分前にしてから。
『久々に寝損なって、』
初めて深夜に連絡が届いた。
スマホを挟み緊張気味な声色と軽い雑談。
『また、掛けてもいいか?』
「ぜひ」
電話越しに安堵したような浅い吐息。
『……お前の声を聞いてたら眠れそうだ』
#wtプラス



「す、みません」
「い、いえ」
かろうじて押し潰さず済んだ、などと言ってる場合でもない。
自身の体重を支えるその下で双眸が泳いだ。
嫌なほど鳴り響く心音、妙な空気が漂う。
「……押し返してくれると、助かるんですけど……」
「……ど、いてくれると……助かるんですけど……」
#wtプラス



少々特殊な事情を抱える女性を好きになった。
「村上さんの恋バナとか」
「え」
「まだ聞いてない、ですよね?」
「……告白する気がない、片想いだったら」
好きになんて、ならなきゃよかった。
強がりでもそう言えたら、まだきっと楽だった。
忘れられない片想いを全身で感じている。
#wtプラス
#同じ台詞でwtプラス



「……わ、」
「おはよ」
いつの間に、と掠れた声。
机の上でうつ伏せ寝だった彼がしぱしぱと瞬く。
彼にそっと手を伸ばし、髪に指を通すように頭を撫でると眠たげに目を細める。
柔く微笑む表情、ゆっくりと机の上に崩れ直した。
「5分したら起こしてくれ」
「あ、寝る? おやすみ」
#wtプラス



「私、寝付くの凄く下手だったの」
「そうなのか」
「うん」
豆球だけの暗い室内、今にも閉じそうな瞼を向かいに互いの呼吸音。
「こうやって、一緒に寝るようになってからマシになったみたい」
「それは嬉しいな」
まだ意識を手放しきれず微睡む彼女の頭をそっと引き寄せる。
「おやすみ」
#wtプラス



「菓子作り手伝ったお礼って、お裾分け貰った。 あげるよ」
「本当!? 嬉しいけど……報酬なら自分で食べればよかったのに」
「オレは味見させてもらったから。 バレンタイン用の菓子作りだし誰かに渡したら、って言われて、お前に」
「……つまり、逆チョコ」
「……そう、なるな」
#wtプラス



「人間カイロ様、女子にも男子にも大人気」
「男子は正直どうかと」
「タメ男子なら一応ハグもオッケーなんだよ。 ウェルカム」
「いや、やめとく」
「タメの男連中こういうのちゃんと遠慮するから、寧ろ大丈夫だという謎の自信があるのよね……」
「もう少し警戒心持っていいと思うぞ」
#wtプラス



「少し寝不足で」
「寝る? 私の膝枕は定評あるよ」
手招きすると、躊躇いがちに私の脚に頭を乗せた。
「……成程、定評」
彼の瞼がゆっくりと落ちる。
タメの男子が無防備に寝顔を晒す姿は案外可愛い。
きゅんとした勢いで頭を撫でる。
「流石にやめてくれ」
笑いながら手を払われた。
#wtプラス
「照れてるだけならやめないんだけど」
「え、弱ったな……照れてるだけだから……」
「可愛いな……」
「やめてくれ」
もう瞼が1ミリも持ち上がらないくらい、寝るモード入ってるとこも含めて。



「心なしか雨のせいで紙が湿気てるな……」
「そうなのか?」
机に置きっぱなしのプリントを折り畳むと彼が寄ってきた。
頭をポンポンと触られる。
「……?」
「本当だ、少し?」
「……あっ、髪、えっと、紙が」
「……あっ」
「ごめん紛らわしかったよね!!」
「いやごめん、悪かった」
#wtプラス
(ひゃ〜撫でられてしまった……)
(撫でてしまった……)



「髪長いな。 触っても?」
「いいよぉ」
それ以来、彼が髪に触れることが増えた。
今になっては私よりもヘアアレンジの上手い手先だ。
「ヘアスタイリストとかになっちゃえばいいのに」
「それは……面白い発想だけど、お前妬かないか?」
「……はっ、その発想はなかった」
「はっは」
#wtプラス
「それに、こういうのは彼女の髪だからいいんだよ」
「ふぅん?」
「完成、できたぞ」
「お、かわいー」



「日曜空いてたらこれ行かないか」
デートスポットとしても遜色ない場所に想い人から誘われた。
喜ぶべきだが、最近流れた噂も知っていた。
「……す、好きな子を誘った方がいいんじゃない」
「……誘ってるよ今」
「え、」
「好きだ」
変わらぬ声音の裏で、彼の手が強く握り締められる。
#wtプラス





 
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