WT短編

□#ワートリプラスまとめ
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空閑遊真




丸1年、行事が一周し2度目ともなると彼も余裕気だった。
「ねぇ、サンタ帽と付け髭あるけど付けてみない?」
「ふむ、いいぞ」
「いいの!?」
ダメ元だったのに許可が。
いそいそ準備して彼に装着。
「えっ可愛い! 抱きしめたいこのサンタ」
「いいぞ?」
「い、いいの……!?」
#ワートリプラス



私が眠るまででいいから、と我儘言って一緒に布団に入ってもらった。
「なぁ」
「ん? 、む」
目も開けずに答えれば唇に柔らかい感触。
暗闇で見えない顔色に幾度か瞬きを向けると、ふ、と含み笑いのような息遣いが届いた。
「なんだか悪いことしてるみたいだ」
わ、わるいこと。
#ワートリプラス



「もうすぐバレンタインだから遊真君に、」
「おれに?」
あっ。
「ゆっ、遊真君だけじゃなくて! 皆にも配ろうと思ってて!」
「ほほう」
あ、あああ、なんて見え透いた嘘を。
頭を抱える私の傍ら、ふと彼の顔が意地悪くなった。
「聞かなかったことにはしないぞ?」
ああああ……
#ワートリプラス



「短い中学生だったね」
「そうだな、4ヶ月か」
こちらに来たばかりの彼が、今日卒業式を迎えた。
「次は高校か」
「学ラン遊真の卒業式見たいなぁ」
「制服が違うだけでは?」
「そんなことないよ」
「そうか?」
「3年後掘り返すから同じこと言ってみやがれ」
挑戦状だなと笑われた。
#ワートリプラス



「3倍返しって聞いたからいろいろ選んだ」
要らない奴は置いといて、おれが食うと言いながら
テーブルに広げられる菓子の山は、どう見ても3倍どころで済む量じゃない。
「こんなに沢山、」
「先月の嬉しかった気持ちだから、1つでも4倍でも受け取れる分だけでいいぞ」
「ずる……」
#ワートリプラス
「嬉しかった気持ちとか言われたら全部受け取りたくなるじゃん……」
「いいよ、別にそれでも」
「……い、いくら掛かったの、総額」
「あ、それはおまえもよく知る面倒見の鬼に口止めされたので言えない」
(三×三)



「あけまして! おめでとう!!」
「??」
「お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ!」
「よく分からんが元気だな」
「今日は嘘をついていい日なんだ」
「なるほど」
「節度弁えるので見逃して。 突然ですが私はバク宙ができます」
「ほほう」
「できたらよかったな……」
「見たかったな」
#ワートリプラス



「まぁ私は伸縮自在だし、その気になれば5メートルになれるからね!」
「ほほう」
「10センチにもなれるよ」
「おれの手より小さい?」
「……驚くほどツッコまれない」
「がんばってるなぁと思って」
「優しく見守られている……」
「かわいいウソばっかりだから応援するぞ」
「応援」
#ワートリプラス



「おぉ、何してるんだ?」
「今日月が綺麗だから、天体観測」
屋上で鉢合わせた彼に望遠鏡を覗き込ませた。
「こんな模様だったのか」
「拡大して見ると違って見えるよね」
感嘆の息を吐く彼は視線をこちらに戻した。
「深夜に会うおまえも、いつもと違って見えるな」
「……そう?」
#ワートリプラス



出迎えの挨拶もそこそこに唇を奪われた。
「!? な、なに、」
「キスの日って聞いた」
彼はけろりと理由を口にすると隣に座った。
「意味多すぎて忘れた」
「はい」
「口なら間違いないなと思った」
「あ、はい……」
ぐいっと肩を押されソファに倒れ込む。
あっさりと本日2回目奪われた。
#wtプラス
「え、絵面がよくないと思います……っ」
「いまさら」
「ていうか、どこで、そんな情報……」
「ねっとってすごいな」
「嘘でしょ」



意識が浮上した時に部屋の外で僅かに軋む音。
音の主を追い屋上に出れば「またやったか」と怪訝な顔で振り向かれた。
「目覚めた時に足音が聞こえただけ」
「それは『おれが起こした』って言うと思う」
「眠くなるまで隣良い?」
「いいぞ。 つつしんでおわび申しあげます」
「かった」
#wtプラス



「うわ大漁」
「思い切りすぎた」
列に並んで目を離した隙に、彼の両腕にどっさり屋台の戦利品、それも主に食べ物で。
「祭いいな」
「沢山食べれて?」
冗談混じりに聞けば彼は「うーん、否定はしないけど」と笑いながら私を見上げた。
「おまえがいつもよりきれいだし」
「……っへ!?」
#wtプラス



「ふむ、支部に何かあるのか?」
「いや別に何も!?」
「……おまえ、ウソ下手だな」
「んんんん、お願い今だけ騙されて……」
切実な私に折れたのか笑いながら了解の声。
「うぅ、絶対采配間違えてる……」
「見方次第だろ、おれは当たってると思う」
「はえ」
「足止め係だろ? 遊ぶぞ」
#wtプラス



「おまえ、まだ起きてたのか」
明け方、廊下でばったり。
目を丸くして驚かれた。
「上手く眠れないと寝るのが嫌になるよね……」
「そういうもんか」
「なんとかなんないかなぁ」
「……手伝おうか?」
「なんとかできるの?」
「ぱっと思い付くのは物理的と精神的」
「あっ物理は嫌だな」
#wtプラス
「精神的に手伝うって何?」
「添い寝くらいまでは余裕で付き合えるぞ」
「あんた寝ないじゃん……」
「それはそれだ」
「これもこれ……」
「おまえもおまえだ」
「何の話してるのか分からなくなってきた」
「ほら、寝な?」



「ハグの日なので甘やかしてください」
「そもそもはぐってなんだ」
「ほ、抱擁……?」
「なるほど」
「これは分かるのか……」
ん、と一言、彼の両腕がぱっと広がり、迷わずがばり。
脇の下を通る一回り小さい手が私の背をポンポンと優しく叩く。
「甘やかし方がわからん」
「充分……」
#wtプラス



「思い付きで花火やれるの良い環境だね〜」
紙袋に手持ち花火詰め込んで支部への土産に。
2人並んで線香花火を眺める。
「おまえも玉狛来たらいいだろ」
「え、変化球」
「毎日花火やれるし」
「毎日はいいかな……」
「毎日会えるぞ」
「……揺らいだ」
#wtプラス
誰に、とは、誰も言ってないけど。



「っ……ゔぇぇ」
「どうした突然」
突然変な呻き声をあげ崩れ落ちる私に彼が駆け寄った。
「おくすりが……苦くて……」
「そんなにか」
「適当に紛らわして……」
ふむ、と肩を叩かれ半泣きの顔を上げる。
ドアップな彼の顔、重ねられた唇。
「紛れたか?」
#wtプラス
「……にがい……」
「だよな」



「抱き枕くらいなら付き合うぞ」
「抱き枕遊真か……」
「ご心配にはおよびません、快眠をもたらすと評判です」
「だ、誰から?」
「多分おまえ」
「ん?」
「お客さん第1号」
「評判という言葉の意味を考える」
「評判。 世間の批評、噂」
「辞書……」
「すまほ便利だな、なんでも見つかる」
#wtプラス



「いつもの言わないの」
「おまえが本気でウソ言ってたらな」
「本気で嘘付くって何……?」
項垂れたままちぐはぐな基準に頭を悩ませる。
「……好きになんて、ならなきゃよかった」
「まだ半分」
「きらい」
「はいウソ」
「最悪」
「これがウソじゃないからすごいな」
感心してる場合なの。
#wtプラス
#同じ台詞でwtプラス



「お、なんか今日あまい匂いするね先輩」
「追い剥ぎしてるからね!」
「追い剥ぎ……?」
かくかくしかじか説明したら納得した様子。
「大丈夫良識ある追い剥ぎだから年下に手は出さないよ」
「ぱわーわーどだな。 じゃあ、とりっくおあとりーと?」
「程度によっては悪戯を受ける構え」
#wtプラス
「なるほど、では」
「そ、その構えコチョコチョか……」
「先輩はこれが弱点って聞いた」
「やだうそまって誰情報!? お菓子差し出そうかな!!」



「うわ遊真!? 屋上だったんじゃ、」
「今日は外寒い」
もぞもぞと寝転がる私の懐にまであっという間に潜り込み、眠らないのに瞼を落とした。
「あんま感じないくせに」
「気温は分かるぞ」
「寒いから避難、でもないでしょ」
「避難だよ避難」
「……つまんない嘘付くね?」
「とられた」
#wtプラス



冬の風に晒されて体温がみるみる奪われる。
はーっと手に息を繰り返し吐き出すと「寒そうだな」と。
「遊真君は?」
「おれは平気」
ん、と手を催促され差し出す。
「冷たいな」
「わ、温か……」
遊真君体温高いんだと思ったのも束の間、
私の手が遊真君の頬に当てられて、あわわわ、!?
#wtプラス



「ちょこを渡す日なのか」
「義理チョコとか友チョコとか……渡す理由は多様だけど」
相槌打つ遊真君がチョコを食べ始める。
「これはなにちょこなんだ?」
「えっ!? と、友チョコ、」
「……ほう?」
「……う、ごめん、私の口からは、言えない、ので……」
「なるほど、後で調べるか」
#wtプラス



「まだ寝ないのか?」
「頭痛くて、」
彼は私の前髪をかき上げ、手を額にぺとり。 っうぇ!?
「熱はなさそうか」
「わ、だっ大丈夫、しばらくしたら治るやつ、」
一際強い痛みに襲われ眉を顰める。
「……頭痛の時に頭撫でるのってどうなんだ、響くか?」
「え、な、撫でてくれる……?」
#wtプラス



[今日はいつもよりはらがへったので大もりでお願いします]
夕方頃に彼から届いたメッセージ。
お腹減ってるんだ、可愛いな……
微笑ましさについ笑ったが、ところで。
[送り先間違えてない?]
[あ]
[ごばくしました たいへんもうしわけない]
やだかわいい、ニヤニヤしてしまう。
#wtプラス





 
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