WT短編

□#ワートリプラスまとめ
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風間蒼也




「……あぁ……」
「……なんだ」
「流石の風間もインフルには敵わないんだなぁ、と……」
喉をやられたのか変な声の彼に見舞いの品を渡す。
中身をがさり一見すると礼の声。
「……家に1人は暇だ」
「休んで」
「帰したくない」
「……LINEの相手で妥協して」
その言い方は誤解生む。
#ワートリプラス



豆電球もなく静かな部屋だ。
音楽掛けていいかと訊けば不思議そうな声。
「……暗闇無音が怖いとか子供だよね……」
「怖いものの1つや2つ」
不意に抱き寄せられ驚いていたら、耳が彼の胸元に。
……心音が、
「聞こえるか?」
「うん、」
「足りるか?」
「……うん」
落ち着いた。
#ワートリプラス



ばたばたばたっ ばん!
「風間さん!!」
「なんだ」
「寒い!!」
「今日は冷えるな」
「聞いてくれてありがとうございました!」
ぱたん。
……
「何だったの今の」
「いいんですか?」
「放っておけ、あれで満足してるらしい」
「へー……」
「(好きなようにさせてるんだな……)」
#ワートリプラス



「お待たせ!」
バレンタイン売り場寄りたいと言われ待ってれば、
袋に2つ3つほどの包装された箱を入れて戻ってきた。
「……誰かに渡すのか?」
「いや、これは自分用ですね」
「自分用」
「この季節美味しそうなのが並ぶので吟味に」
「成程」
ほっとしたような残念だったような。
#ワートリプラス



一人酒が寂しかったので暇なタメを捕まえた。
「風間達と居る方が楽しいなんて思うから彼氏と続かないんだなぁ」
「俺もお前と居る方が楽しい」
「嬉しいなぁ」
「……相変わらず伝わってないな」
「んん?」
「飲みすぎるなよと言った」
釘を刺すとつまみだけヒョイパク食べ始めた。
#ワートリプラス



「だめだー、風間居るから気が散っちゃう」
締め切り近いレポート消化に集中しようという話になったはいいが、
自宅に最近できた恋人が居るのは落ち着かない。
「風間君はないんですかそういうの」
「そういう時期はとっくに終わった」
「とっくに……」
#ワートリプラス
片想いが長かったもので。



「……」
「あ、バレた」
喫煙所のガラス越しにばちっと合った視線、彼は幾度か瞬きを繰り返す。
「吸うのか」
「たまーにね」
特有の臭いも厭わず近付く彼は私の手からひょいっと煙草を奪った。
「やめておけ」
「え〜……」
「苦くなるだろ」
「……あー、そういうこと言っちゃう?」
#ワートリプラス



寝付けないまま瞼を閉じていると、玄関から鍵の開く音に意識が引っ張られた。
温かい布団を剥ぎ、薄ら寒い空気と冷たいフローリングに触れる。
「おかえり、お疲れ」
「まだ起きていたのか」
「寝付けなくて」
思案数秒。
「……散歩でもするか?」
「いや寝なよ」
「俺の台詞だが」
#ワートリプラス



「……風間」
「なんだ」
「好き」
広い便箋にたった4文字告白の言葉を綴り早数ヶ月。
「……ようやく言う気になったか」
溜息混じりに呟く彼は見覚えのある封筒を机に滑らせた。
便箋を開く。
「……気付いてたの?」
「何度お前の字を見たと」
4文字の右下に『俺も好きだ』と増えている。
#wtプラス



「最近よくご飯のお誘いしてくるね」
「夏が近いからな」
どういう文脈だ?
首を傾げると溜息混じりに「お前は夏食欲落ちるだろ」と。
「……えっ、私の食欲法則性あったの!?」
「頓着なさすぎだ、いい加減にしろ」
「寧ろなんで覚えてんの!?」
「毎年心配すりゃ覚える」
毎年、心配。
#wtプラス
「知らんかった」
「今覚えたな」
「はい」



危機感薄い自覚はあるが、そんなに抵抗できないものか?
「これを解いてから言え」
彼は片手で私の両手首を一纏めに。
ぐっ。
「……? え」
本気で離したいのにまるで解けない。
え、マジ?
「身長がさほど変わらない男の片手でお前は両腕を封じられる。 言いたいことは分かるな?」
#wtプラス



「もう起きたのか」
自室から出てきた私に瞬きながらキッチンに立つ彼は「パン1枚しか焼いてないぞ」と。
「すっかり馴染んだなぁ」
「しばらく住めばな」
当然だと言わんばかりに言葉を紡ぐ一方で、彼の口元は笑っている。
「身支度」
「はぁい」
「コーヒーでいいのか」
「うん、ありがと」
#wtプラス



レポートが長引いてるらしい、深夜になってもパソコンと向かい合っている。
「うるさいと思うが」
「大丈夫」
1人で寝るのが物寂しくて毛布引きずって近くに寝転がった。
タイプ音と僅かな呼吸、次第にうとうとし始める。
「……寝たか?」
「まだ、おきてる……」
そうか、と頭を一撫で。
#wtプラス



偶然1人だった彼を見つけて思わず猪如く突進するように抱き着いた。
流石の体幹で受け止められ、頭上から「なんの真似だ」と溜息混じりの呆れた声。
「……風間さんに、奇襲を掛けるのが夢で……」
「叶ったか?」
「このままハグしてくれたら最高の結果になると思います……」
「成程」
#wtプラス



タメ連中と飲みで遅くなる連絡。
「今日は帰ってこないかと思った」
「まさか」
玄関の物音に出迎えれば彼は荷物をどさりと置く。
「ケーキあるけ、ど」
言いかけにも関わらず、肩を引いて抱き寄せられる。
項垂れる彼は普段より重く感じた。
「……酔ってる?」
「少し、飲みすぎた……」
#wtプラス



異なる生活環境からすれ違い入れ違い、挙句遠征でしばらく会えないと告げられた。
「そう、ですか、仕方ないですね……」
「……聞き分けがいいな」
「仕事にとやかく言える立場でもないし、」
「だが恋人だ」
ぴしゃりと言い放ち、頬を撫でる。
「彼女にそんな顔させるのは本意じゃない」
#wtプラス
「とりあえずツケは払おう」
「ツケ」
「そして遠征分の前払い」
「え、なんかお代金でも支払われるのですかね??」
「恋人の務めを果たすつもりだが何故代金の話に」



「トリックオアトリート! です!」
「流石にないな」
「なら悪戯ですかね」
「今か?」
「え?」
彼は私に向き直り、腕組み、仁王立ち。
「どこからでも掛かってこい」
「うわ、手出しづら……」
「会議が控えてるので尾を引かないもので頼む」
「了解……」
#wtプラス
「うわ、通路で何やってんの?」



「え、えっ!? 嘘、私ずっと握ってて……!?」
寝落ち直前に彼の手を掴んだ記憶がうっすらある!
慌てて離して謝れば、普段と変わらない声色で大丈夫だと。
「振り解くのも気が引けてそのままにしていた」
「……!」
風間さんが?
「よく眠れたか?」
「ぐっすりと……」
「ならいい」
#wtプラス



「見て風間! おもちゃの指輪まだ普通に中指通る!!」
掃除している時に見つけた、保育園や小学校低学年辺りに遊んでいた指輪だ。
風間は私の手を取り、何を思ったか私の指輪を外す。
そして薬指にはめ直し、じっと見つめた。
「成程な」
「待って待って何が??」
#wtプラス
号数確認した?




 
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