WT短編

□#ワートリプラスまとめ
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水上敏志




「やっぱ頭良いな、助かった」
困った課題に彼を頼ったら正解だ。
「誕生日サマ捕まえてよー言うわ」
「えーん、何か奢るから」
「……まぁ付きおーたる言うたん俺やしな」
「ほ」
「コンビニ肉まん」
「案外安い男だな……」
「女子にんな集るかい」
……女子とは思ってくれてるのか。
#ワートリプラス



「元々活字好きやしなぁ」
そう聞きパソコンで書くか本気で考えたけどやめた。
「読みづらいと思うけど、」
「……手紙?」
ゆっくりながら受け取る彼は封筒をじっと眺める。
「なんか、読む物ないな〜みたいな時に、読んでくれたら」
「……緩いな、ラブレターちゃうん?」
「ら、」
#ワートリプラス



「癖字なんは勘弁してや」
手紙で告白をした。
しばらく経った今、返事と思しき封筒を差し出されている。
そっと受け取れば彼は俯き頭をガシガシ掻いた。
「あーっもうほんまはっず、はっず。 もう一生書かんわ」
……そんな反応見せられると、本文読む前から期待してしまう。
#ワートリプラス



「久々にお前とも会えたしいろいろ話せて今日楽しかったわ」
背伸びしながらの彼に「どういたしまして?」と笑う。
「こういうの改めて言われると照れるな」
「ちょぉやめろや俺まで照れるやん」
「あっはは!」
お互いの顔の赤さに気付かないフリをして解散した。
#ワートリプラス
今はまだ友達。



つまらん。
視覚を本に割いておきながら人の話も100%頭に入るらしい。
「聞いてるなら視線の1つくらい頂戴よ」
会話してる感じしないじゃん、と脇腹をつつく。
珍しく大きく揺れた肩、同時にそれまで釘付けだった本と腕を盾に防御体勢。
「……お?」
「うわ、悪い顔しとるわぁ……」
#wtプラス



「水上君、この間くれたお返事」
「おー」
「なにあれ」
手紙のやり取りを繰り返すこと数回、
読解力どうこうの問題ではなくマジの暗号文が届いた。
「作問したから解いてや」
「作問」
「ヒント全部渡しとるから」
「えっいつ何それ」
「我ながら完全に方向性間違えたなぁ思たけど堪忍して」
#wtプラス
「解くのはいいんだけどその前に……1つだけ……突っ込んでいい……?」
「やめーや」
「……おねがい」
「蚊の鳴くような声やめてぇや……薄々内容気付いとるからええ言われへん」
「……なんで、」
「ダメダメダメ」
なんでそんな顔赤くなるの。



「えっ、うわ水上!? びっくりした!」
「俺の台詞やわ、何しとん」
夜中コンビニで鉢合わせ。
凄い怪訝な顔。
「見た通りアイス買いに」
「やなくて、時間」
「いや、なんか……寂しくて?」
「……待っといて」
「ほ」
「送るわ」
#wtプラス
(……俺呼んだらええやん)
なんて、恋人やあるまいし。



友人がぽろりと「水上君って彼女居るのかな」と呟いた。
先越されることを危惧して、夕方鉢合わせた彼にほぼ告白を口走った。
目を点にして瞬く彼にやってしまったと頭を抱える。
「……アホやん、何自滅しとん」
「頼むから今の聞かなかったことにしてくれない?」
「嫌なんやけど」
#wtプラス



「えらいしんどそうやな」
「……水上、」
ラウンジ一角でぐったりしてたら「もう少し休めるとこあるやろ」と呆れ半ば声を掛けられた。
「動く元気すらない」
「なんか要る? 買ってきたるわ」
「んー……ココア、アイスの」
「ホットのがええんちゃうん」
「……じゃぁホットで」
「ほい」
#wtプラス



[連休地元帰るんやけど会えへん?]
そんな連絡に二つ返事した数日前。
「うい長旅お疲れー」
「うわ、ほんまに駅まで迎えきよった」
「時間教えてくれたし」
「明日のがゆっくりできたやん」
「久々だし早く会いたかった、みたいな?」
「……そういうのどこで覚えてくるん? ずるいわ」
#wtプラス



「トリックオアトリート!」
「あー……なんもないわ。 別に悪戯目当てやないんやっけ?」
「本音を申しますとぶっちゃけ悪戯とかどうでもいいから菓子を寄越せ」
「カツアゲしとんなぁ。 帰りのコンビニ付き合うんやったら何か奢るわ」
「よし言ったな!!」
「300円くらいで勘弁して」
#wtプラス
「遠足だ……」
「どこまで行くん」
「富士山」
「テキトーな会話してんなオイ」



「お前からの贈り物嫌がる奴おらんやろ」
「え、私の評価どうなってんの? 凄い買われてるな」
……ていうか、なんで俺に相談するんやろ。
個人的に面白くない話だけに早めに切り上げたい。
迷う色を残す視線が決意に変わる。
「……なら、貰ってくれる?」
「……あ、そういう奴?」
#wtプラス



「俺の連れになんか用すか」
わ。
ナンパされたも束の間、待ち合わせ相手の友人にあっさり追い払われた。
私の肩を引き寄せた手が離れてく。
「ナイスタイミング」
「すまん、もうちょいはよ来りゃよかったな」
「え、いーよいーよ大丈夫。 運悪かっただけ」
「次からは気ぃつけるわ」
#wtプラス



「っはーさむさむ、カイロさん手ぇ貸してや」
「はぁ〜い」
やり取りを耳に挟んだ同い年連中が「カイロさん呼びかよ」と笑った。
「本人が人間カイロ様って名乗っとるし、ええやろ思て」
「人間が名字でカイロが名前」
「初耳やわ」
「水上の手全然温まらないな?」
「カイロさん頑張って」
#wtプラス



本当は、誰かと一緒に寝るのはそれほど得意じゃない。
ベッド上の可動域は狭くなるし、他人の寝息も寝返りも衣擦れの音も。
普段1人で眠る環境で、別の存在に気が行ってどうも寝付けにくくなるから。
眠る恋人の頭を軽く撫でる。
(彼女の寝顔見てから眠れるんは利点、かもなぁ)
#wtプラス



「そんな自己評価低くするこたないやろ」
「とは言われても」
「優しいし真面目やし声もええしノリもええやん」
「うーん……」
せっかくの褒め言葉の羅列だがどれもピンと来ない。
優しくて真面目で……
「……え、水上って私の声を良いと思ってたの?」
「遅。 え、そこ掘り返すん?」
#wtプラス



「溜め込んだ顔しとんなぁ」
「……水上」
「もう少し言いたいこと言ったらどうなん」
「水上が言う?」
「お前ほど疲れてへんわ」
俺気にせーへんからたまには愚痴りや、と以前言われたが出るのは溜息ばかり。
「……親しいからこそ、話せないことも多いよ」
「(分からんでもないなぁ)」
#wtプラス



「水上うちわ似合うな」
「褒めとるん?」
隣に並べば「浴衣暑そうやな」と生温い風が送られてきた。
「暑い〜、男共も着ればよかったのに」
「実家に置いてきたわ」
持ってはいるんだ。
どんな柄だろうと想像を膨らませる。
「……浴衣着てる水上見たいな」
「……来年やったらええけど」
#wtプラス



ソファに腕組み足組み、俯く姿が視界に入った。
「(珍しい、寝てる?)」
音を立てないよう隣に腰を下ろすが、
ソファが沈むと同時に閉ざしていた瞼が持ち上がる。
「あ、ごめん起こした」
「や、ええよ」
1つ呼吸を整えると再度目を閉じ、ずるずると私の肩に頭を。
……えっ、えーっ!?
#wtプラス



[遅くなった〜〜おたおめ!!]
[おー、おおきに]
[返事はや びっくりした]
[ちょうどスマホ触っとった]
[ねね、電話掛けていい?]
[ええけど]
……
「もしも〜し」
『もしもし』
「このまま日付変わるまでの数十分、本日の主役様独り占めするから」
『いや寝かしてや』
笑ってる。
#wtプラス





 
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