WT短編

□#ワートリプラスまとめ
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荒船哲次





気になってた女子からチョコを貰った。
顔を合わせ挨拶もそこそこに突き出された包装、
反射で受け取った瞬間、彼女は脱兎の勢いで去った。
(あの雰囲気は本命、っぽいよな……)
自室に持ち帰り開封、1つ掴んで口に運ぶ。
「……味分かんねぇ、」
あの一瞬のやり取りばかり思い出して。
#wtプラス



「おい、なんなんだ」
興が乗ったので通路でかち合った荒船を通せんぼした。
「通してほしくば、えーっと」
「止めてから考えんなよ」
「わ、私を撫でろ!」
「考えてそれかよ」
安い奴だな、と頭をぐしゃり。
……なんも思い付かなくて撫でろ言ったけど、荒船に撫でられたの初めてだな?
#wtプラス
「……これは使える」
「なんだ、他の奴にも脅迫すんのか?」
「人聞き悪っ」



友人達と遊ぶ予定が、若干名迷子ったらしく荒船と待機中。
「う、少し薄着すぎたな……」
肌寒い気温に身を震わせれば、男物のアウターが私の肩へばさり。
「おぉ?」
「貸してやる。 ついでに迷子探してくる」
離れてく後ろ姿とアウターを交互に見つめ。
「……おぉ流石男子」
袖が長い。
#wtプラス
「おい誰が袖通していいっつった」
「私撫肩なんだからあんな掛け方されても落ちるってば」



「今課題してて」
『あっ本当? なら静かにしとくね』
無言通話がしばらく続くと、規則正しい呼吸が聞こえた。
小声で呼び掛けたが返事はない。
「(マジか、数分で寝落ちた?)」
初めて聞く穏やかな寝息に体温が上がる。
……通話を切るのは、もう少し堪能してからでもいいだろう。
#wtプラス
(……あー、課題集中できねぇなこれ)
(あの人ちゃんと布団で落ちたんかな)



「お待たせしました」
扉を開ければ、運転席に座る彼女が「全然」と笑った。
「金髪の子よく居るね。 友達?」
「まぁ」
「彼も乗ればよかったのに。 一緒に送ったげるよ?」
「……せがまれてたけど拒否りました」
「あら」
「非常時以外絶対乗んな、と」
「ブフッ」
爆笑されて解せない。
#wtプラス



「あれ、荒船帽子2つも被って何してんの?」
「あいつに預けられた。 手空いてねーからそのままにしてる」
ふぅん、と相槌を打つ同級生は重ねられた帽子のつばを見つめ、
揶揄を孕んだ笑みを浮かべた。
「なんかあれだね、付き合ってるみたい」
「……」
#wtプラス
「ただいま〜」
「あ、戻ってきた」



ぐらり、と焦点の合わない視界と変な汗に、近くの壁に寄り掛かった。
足を崩して座り込み、浅い息を繰り返す。
「大丈夫か?」
「え、あ、私か……一応意識は……」
「医務室連れていくぞ?」
失礼、の一言と同時に浮遊感。
薄く目を開いて初めて声の主を見た。
あ、この人しってる、
#wtプラス



「罪な男だなと言われた。 なんでだ」
「あー……荒船天然たらしの傾向あるからなぁ」
「は? 初めて言われたぞ、どこがだよ」
「ちょっと私のこと褒めてみて」
「……観察眼が鋭く気も配れて、努力家なのにそれを見せない謙虚なところを本当に尊敬してる」
「ほら見ろ」
「なんでだよ」
#wtプラス



久々に会った友達とご飯に。
別れ際「そういやこれ」とオシャレな箱を渡された。
「え」
「今日バレンタインだろ」
「……えっ、私なんも用意してない!」
しまった……と顔を覆えばからから笑う声。
「お返しは来月でいいぞ」
「3倍っすか……?」
「ぶは、冗談。 また飯食いに行こうぜ」
#wtプラス




 
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