短編棚M

ここ数日は先生です!
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「ふぁ・・・」


欠伸1つ、足がぐらりと下に吸い込まれる感覚、
降下していくエレベーターが1階の玄関ロビー前で止まり扉が開く。


「おはよー」
「おう、はよーっす 桜さん」
「あれ、日向君早いねー。 おはよ」
「今日朝練あるんすよ」


日向君の肩には白いタオルが巻かれており、
足元には誠凛の鞄が置かれていた。

どうやら走り込みしてきた後で、そのまま学校向かうらしい。
朝っぱらからお疲れ様。 学生の無尽蔵な体力が少しばかり羨ましい。


「桜さんは今日仕事っすか」
「午前中だけね、午後からはボランティア」
「ボランティア?」


不思議そうに聞く日向君に小さく笑った。

ロビーの端に設置してるコーヒーメーカーの横から
伏せてあるカップを1つ取り出してコーヒーを淹れる。

因みにコーヒーはかなり少量で後は全部牛乳。 苦いのダメ。

あまりのコーヒーの少なさに『いやもうそれ牛乳でいいじゃん』と
あらゆる住人が口を揃えてそう言った。 けどやめない。


「もーすぐテスト期間でしょ」
「っあ゛・・・え、じゃぁ先生として・・行くんすか?」
「当たり〜、今日は誠凛の方に行くからね」


ブイサインした私に、あー・・・と、まぁ曖昧な返事が。


「・・ただ人引き連れてくるのはヤメテクダサイ」
「とは言われましてもー、物珍しさ? みたいなもんだし」
「おはよー! あら、日向君早いわね! 桜さんも」


エレベーターからリコちゃんの姿。

飲みかけたコーヒー(というかカフェオレくらい薄くなってる)の
手を止めて、リコちゃんにおはよう、と返した


「カントク、今日学校に桜さん来るんだと」
「桜さん、それホント!?」
「んー? んー、そう。 補習のセンセすんの」


一気に薄いコーヒーを飲み干してカップを置いた


「とは言っても・・今日は5時間目くらいからだけど」
「放課後・・・っていうか、補習やった後は桜さん暇?」
「暇だよー、予定では」
「絡まれてなけりゃな」


あー、はは。 数ヶ月前のことが大分印象的だったらしい
頬を小さくかいて、苦笑いをした。


「おはようございます」
「おっす、はよー ・・・おい」
「おはよー・・、黒子君 寝癖凄いね・・・今日も」
「あ・・・、」


気付いてなかったらしい。
苦笑いして頬をかいた


「後で梳いてあげる。 もしくは手ぐしくらいはしときなよ」
「はい ありがとうございます」


黒子君は肩にかけていた鞄をソファの近くに置いてソファに腰を下ろした。


「そういえば・・キャプテン早いですね。 走ってきたんですか」
「おう、少しだけな。 今日朝練だろ」
「そうそう! 時間が許す限りメニューやるわよ!」


そう言い放ったリコちゃんを見て、日向君は少し青い顔をしているのを見た。
表情が表に出てこない黒子君は意外とそのまま。

相当ハードらしいしね・・・、うん
私はゲームと試合の彼らしか見たことないけど。


「大丈夫! 放課後は桜さん来るから頑張れるでしょ!」
「・・・え? 紅咲さん、」
「補習の先生すんの。 黒子君のクラスにも行くからね、今日」


そういう風に言ったら、ふと思い出したような顔して頷いた
そしてまたエレベーターの降りる音


「ふぁ〜・・・はよーっす、」
「ん、火神君おはよー」


今日は誠凛が朝練からか、誠凛の人が先に起きてくるなー

と思って、ソファに座る黒子君の髪梳かしてたら、
リコちゃんの目がキラーンと光った


「火神君んんん!」
「うぉ!? いきなり何しやがる・・・すか!」


何と火神君の首根っこ掴んで、あの大きい体を前後にぶんぶん揺らし始めた。
ちょ、リコちゃん・・・凄いね、見かけによらずかなりパワフルで・・?


「今日! B組に桜さんが行くみたいだから
 キッチリミッチリ教えてもらいなさい! いいわね!?」
「は!? 話読めねぇんすけど!」
「赤点取って追試なんかに、時間取られらんないのよ!?」
「ういっす! っえ!?」


・・・最早条件反射でリコちゃんに、
返事をしてしまっている火神君に苦笑いを見せる。

大分寝癖が落ち着いた黒子君の淡い水色の髪に最後に1回梳かして手を離す。


「いつもあんな感じなんで、気にしてたらキリがありませんよ」
「あはは、うん 知ってる。 はい、おっけー」
「ありがとうございます」
「どーいたしまして!」


手をひらひらさせて笑った。
さてと、私もそろそろ準備しないと


「今日8時から練習だからね! 遅刻せずに来てよ!
 後、寝てるか起きてるか分からない伊月君達も!」
「あ、じゃぁ私が仕事行く前に様子見ていくね」
「桜さん頼みます! 多分水戸部君と伊月君は起きてる!」


オッケーのサイン送って、エレベーターに乗ろうとした
あれ、さっき火神君降りてきたのに エレベーター1階にない?

更に上に行くボタンを押す前に、エレベーターは1階に向かってた
電子音が鳴って扉が開く、


「ふぁ・・、あ?」
「赤司君おはよ、 もしかして眠い・・?」
「・・寝起きでつい、な・・」


ごほん、と小さく喉鳴らしした赤司君は
エレベーターから降りて、辺りを見渡して一言


「今日はやたら誠凛が多いな」
「朝練があるのよ。 8時から」
「あぁ、そういうことか」
「さて、それじゃ私は仕事行く準備してきます」


ロビーに居る皆に軽く手を振る。
そのまま扉が閉まり、自分の部屋がある2階にへと向かう

8時から仕事・・と、誠凛の朝練。
現在7時過ぎ。 部屋寄るとするなら7時半か

目先2時間の予定を立てつつ、必要な物の確認。
今日は私もちょっと忙しそうだ







「あ、待って待って。 最初はここがこうなるでしょ?」
「ういっす」
「で、まずこれを・・・」


そう言い掛けて、思わず廊下側を見た
どうしよう、何故か知らんがギャラリーできてる

他の生徒達は補習も終わって、部活なり帰るなり散っていって
今この場は火神君と私のマンツーマン。 と、廊下のギャラリー


「紅咲ー」
「んー?」


ふと火神君に目を向けると、
火神君も人だかりのできた廊下を見つめた


「このプリント終わったら体育館行こーぜ、です
 流石に人だかりできすぎだろ・・」
「ごめんねー、流石に物珍しいらしー。 特別補習の先生は」
「そんだけじゃねぇと思っけど・・」


ボソッ、と小さく呟いた言葉は
聞こえたような聞こえなかったような。

っていうか、聞き取ることはできなかったけど


「んー、ま いっか。 続き教えるよ」
「ういーっす」
「紅咲さん、火神君」
「うおぉっ!?」


急に割って入ってきた第三者の声

・・・び、 ビックリした・・・!
肩がギクッ って震えたよ・・!

廊下側の人もざわついてるし!
何とか平常を装う。 心臓まだバクバクしてるけど


「と、黒子君どうかした?」
「邪魔してすみません。 カントクから伝言預かりましたので伝えに」
「カントクから伝言?」
「はい」


立ち直して、首を傾げて黒子君を見る
黒子君は小さく息を吸って、


「『10分後ゲームするから、桜さんよければ!
 後バ火神! 桜さんの手ぇ煩わせないでよね!』 ・・と」
「リコちゃん・・・ありがたいけど後半、」
「何だよ、その扱いの差! っくそ、紅咲早く終わらせるぞ!」
「一応今日は先生ですよ、火神君」


小さく笑いながら、説明に入る。
とりあえずハイスピードで済ませて、さらっと丸付け。

何とか5分で済ませた。 珍しく早い、と思ったり
・・・・部活のため? なんて。


「くっそ、やっべ 後5分! 黒子、紅咲 走るぞ!」
「ちょっ、ちょっと待って 私、今スリッパなの!」
「はぁ!? 何でそんな走りにくいの履いてんの!?」
「一応来客者だからね!? 走るための靴じゃないから!」



(あーっ やっと来たぁ! 桜さん、大丈夫!?
 っていうか今日もギャラリー連れてきてる!)
(リコちゃんごめん! まずは靴下履かせて)
(裸足にスリッパ!? それで走ってきたのね!?)
(だって時間なかったし、靴下脱ぐ時間しかなくて)

(てかバ火神ぃ! 桜さんの手煩わせるなって言ったでしょぉ!)
(ちょっ、これでも急いだんすよ!?)
(紅咲さん、よかったらゲーム参加しませんか?
 降旗君がバッシュ貸してくれるそうですよ)
(・・・・へ? 私見学だけじゃないの?)





 

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